恐怖!納骨堂で1泊!

(「グレートツーリング '90 in 北海道」にて)

 「明日はどこに泊まろうか?」富良野駅のライダーハウス「ツーリングトレイン」でウメ、オユタ、ヒロ、マコちゃんの4人は、ツーリングガイドを前にして協議していた。帰りのフェリーの関係上、札幌か岩見沢辺りがいいとは思われる。結局、なんか札幌はイメージ的にゴミゴミしていそうだし、どうせなら夕張にも寄ろうということになり、夕張にアクセスのいい岩見沢に決定した。早速、ツーリングガイドに載っていた岩見沢の安い宿に電話してみる。すると、「申し訳ございません。オーナーが急病の為、宿泊できるかどうか分からないのです。」という回答である。電話に出たのはオーナーの看病をしている人で、明日の午前中にもう1度電話を入れて欲しいとのことであった。大丈夫かいな?しかしこのエリアには他に宿が載っていない。旅行代理店にまた行くのも面倒くさいから、ま、いいか。駄目なら駄目で、その時に考えよう。
 翌日、滝川市で宿に電話してみた。すると、な、なんと!「申し訳ございません。オーナーが亡くなった為、宿泊はできなくなってしまいました。代わりに私のお寺でよろしかったら泊まってやってください。」おいおい、なんかすごいことになってきたぞ。看病していた人は、岩見沢市内にある「阿弥陀寺」の住職さんだったのである。お寺と聞いて、各自様々なことを想像したようだったが、お寺に泊まれるなんて滅多にないことだと、御好意に甘えることにした。
 阿弥陀寺は岩見沢駅の近くにある、なかなか大きなお寺だ。しかし案内されたのは、納骨堂である!1階が簡易宿泊施設で、2階にお骨が納められている。4人はさすがにビビッたが、建物も新しくてきれいなので、ありがたく上がらせていただいた。
 夜、4人のいる部屋以外は真っ暗であった。「よし、度胸試しをしよう!」とウメが言い出したが、みんな嫌がった。「しょうがないなあ。」どうせ暇だし、ウメは1人で2階を覗いて来ることにした。2階にはホールにある階段を上っていく訳だが、みんなのいる部屋から漏れる明かりは徐々に弱くなり、階段の途中からは闇に包まれていた。だがウメは臆することなく階段を上っていった。
 さすがに新しい建物なので、所々に非常口や非常階段の誘導灯がある。そのおかげもあり、目が慣れてくると、うっすらと全容が見えてきた。2階はさながら図書館で、本棚の代わりに仏壇を並べたような光景であった。何より恐かったのは、圧倒的な静けさである。線香の香りが恐怖を倍増させていた。この雰囲気をお化け屋敷のアトラクションで再現できるか?否!ウメは階段を下りながら思った。(本物に勝るものなし!)
 布団は新しく、柔らかのふかふかであった。ヒロは夜中に寒くて目が覚めた。風邪をひいた訳でもないのに、どうしてこんなに寒いんだ?しっかりと布団にくるまりながらウメを見ると、布団を蹴飛ばして体が完全に露出している。彼も起きているらしく、ふと目と目が合ってこう言った。「暑くて眠れねえよ。」
 朝、オユタは体が就寝時と正反対の方向で目が覚めた。マコちゃんは午前2時に目が覚めた時に、外が明るかったという。いずれにせよ、誰1人まともに眠れたものはいなかったのである…。とまあ、色々と書いてきたが、阿弥陀寺の方々には本当に感謝している。

「ありがとうございました。」


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