「グレートツーリング '02 in 東北」の第2日目、入道崎から夕日を眺めたGTEC一行6人は、駐車場の土産物屋を物色した。夕日を見に来ていた観光客は、太陽が沈んでしまえばもうここに用はないとばかりに、一斉に各々の宿に向かって散っていき、土産物屋もぼちぼち閉店の準備に取り掛かる。そんな中、マコちゃんの目に留まったのは、魚の形をしたオレンジ色の揚げ菓子がぎっしり詰まった袋である。どの店にも入り口付近に山積みされており、この地域の特産品らしい。その名もズバリ「黒潮風味“ひめ鯛”」。鯛味の菓子か?こいつはきっと某えびせんのように、やめられなくなってしまうに違いない。今晩の酒のつまみにもってこいじゃないか!試食できないのは残念であるが、マコちゃんは迷わず購入した。 この日の宿は国民宿舎「男鹿」。夕食の後、6人は部屋で缶ビール片手に乾杯をし、さっそくマコちゃん提供のひめ鯛を頬張った。が…。盛り上がっていた室内を一瞬静寂が包む。「こういうのが好きなのか…。」と冷ややかな視線を浴びたマコちゃんは、「ち、違う!試食せずに見た目で選んだの!」とあわてて弁解した。しかし、この菓子を割り勘にしようと目論んでいた彼は、申し訳なくってそんなことを口に出せなくなった。その後、再びひめ鯛に手を伸ばす者はいなかった…。 ひめ鯛はサクサクッとした歯ごたえのスナック菓子である。だがそれは、期待していた鯛の味など全くせず、しかもやけに甘い。原材料を見ると、小麦粉、澱粉、醤油、砂糖、膨張剤、着色料(黄5)と書かれている。鯛など入ってはいなかった。マコちゃんは自問自答した。「一粒一粒が鯛の形をしているからこのネーミングなのか!?しかしどこが“黒潮風味”なんだ?ただ甘いだけで、ひねりも何もあったもんじゃない。それはともかく、このまま家に持って帰っても、果たして食べ切れるだろうか?酒のつまみには適していないにしろ、せめておやつとしてなら?い、いや、自信がない。こうなったら…。」 それから4日後、一足早く帰路につくマコちゃんは、出発間際、見送りのウメに「こいつを酒のつまみにしてくれ!おカネはいいから!オレのおごりだ!」と、ほとんど丸々残っているひめ鯛を無理矢理手渡し、アクセル全開で走り去った。「(ウメ)お、おい、ちょ…、くそ〜、厄介払いかよ、マコちゃん…。」まんまとしてやられた。 その更に翌日の夜、メープル仙台ユースホステルの談話室は、日本各地からやって来た旅人で賑わっていた。ウメは「チャ〜ンス!」とばかりに「これ、男鹿半島で買ったんですけど、よかったらどうぞ。」とひめ鯛をテーブルの上に気前よさげに置いた。これで中身がぐっと減ってくれれば…というウメの期待もむなしく、やはり2度袋に手を伸ばす人はいなかった…。 まさか食べ物を粗末にするわけにもいかず、結局ウメはひめ鯛を自宅まで持ち帰った。 その後、ウメの家族、会社の同僚、ペットのフェレット、隣りの家の犬と、ことごとく不評を買い、仕方なくウメは1日少量ずつ、約1ヶ月を掛けてようやく食べ尽くすことに成功したのであった。 名物にうまいものなし。名前に騙されてはいけない。試食は必須である。 というわけで、男鹿半島に行く機会があったら…、 |
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