2004年5月1日10時頃、ウメ、ヒデ、カンちゃん、ヒロ、オユタの隊列は、松井田妙義インターチェンジから上信越道に入った。上信越道→関越道→外環道→常磐道を経由して筑波山を目指すのだ。 ランプウェイで一気に200km/hまで加速して本線に入るウメ。2番手のヒデのCBR900RRファイヤーブレードも後に続いて本線に入ろうとしたが、走行車線に(あくまでヒデから見て)遅いクルマがいたので、一旦その後ろに付き、一気に追い抜くためにシフトダウンしようとした次の瞬間、彼は左手に異変を感じた。クラッチレバーに妙なグラつき感があるのだ。ヒデがふとクラッチレバー付近に視線を向けると…、そこには信じられない光景が! 何とクラッチレバーのボルトが浮き上がっており、今にも外れそうではないか!?「(ヒデ)やばい!」すかさず左手でボルトを押さえようとした次の瞬間、無情にも路面のギャップを拾ってしまい、目の前でボルトが吹っ飛んでいった!とっさに左にウィンカーを出し、路肩に寄る。クラッチ操作がまともにできない為、停止すると同時にエンストした。これが追い越し車線だったらどうなっていたことやら…。しかし、まだ危険が去ったわけではない。高速道路の路肩で停止すること自体が命懸けなのだから。 3番手のカンちゃんは、ファイヤーブレードから何やら黒い物体が飛んでくるのが目に入ったと思った次の瞬間、左腕に激痛が走った。脱落したボルトが直撃したのだ!何かは分からないが、とにかくヒデのマシンに異変が起きたことは確かなようだと察知したカンちゃんは、ヒデと共に路肩に停止した。 一方、バックミラーでヒデがペースダウンするのを確認していたウメは、路肩に停まるのは危険と判断し、次のパーキングエリア(甘楽PA)で待つこととした。ヒロとオユタは追い越し車線を走行していたので、そのままウメに続いた。 ヒデがバイクを降りて状況を確認すると、軸径φ10mmの特殊ボルトがなくなり、クラッチレバーがガタガタである。レバーを押さえながら走行することはなんとか可能そうだが、そんな職人芸じみた状態では、頻繁なギアチェンジはとても無理である。幸いにも受側のナットは溶接してあるので、ボルトさえ見つかれば問題は解決しそうだ。まずはカンちゃんに状況を説明し、先行するウメ達に伝えてもらうことにした。 カンちゃんは発進したものの、考えてみれば、仮にウメが異変に気付いておらず、隼が戦闘モードに入っていたとした場合、次の休憩予定の関越道高坂SAまで追いつける筈がない…。甘楽PAに3人共待っていることを期待して入ってみると、それはみごと的中した。 ここでウメ達とヒデからの連絡を待っていたカンちゃんは、ふと腕の痛みを思い出した。見ると、ジャケットには、ボルトの痕がクッキリと残っており、皮膚は赤くなっていた。幸いただの打撲で済んだが、これがクルマのフロントガラスだったら?あやうく大事故にもなり兼ねないところだ。 |
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ヒデがカンちゃんと別れた後、1人路肩から脱落したボルトを探索していると、白色でフェンダー・ミラーのセドリックがハザードを出しながら近付いて来た。何だ冷やかしか?と思いきや、天井から赤い回転灯が出現!白いヘルメットをかぶり、青い服を着たお兄さん達が登場し「危ないから次のICで降りるように。」とのこと。確かにクルマがビュンビュン走っている脇を歩いているのは自殺行為ではある。しかし、こんなところで降ろされても、バイク屋なんてある訳ない。この場は素直に従ったフリをし、ギアチェンジの回数が少なくて済む高速を使って埼玉辺りまで行ってからバイク屋を探そうとしたら、律儀にも次の下仁田IC料金所までしっかりと誘導してくれた…。 ICを出てウメの携帯に連絡を入れる。バイク屋のことばかり頭にあったヒデは、ウメの“ホームセンターで応急修理をしたらどうか?”という言葉に励まされ、とりあえずバイク屋とホームセンターをOR検索しながらR254を東へ進む。他の4人は関越道高坂SAまで先行して待っていてくれることになった。 R254は信号やカーブの少ない道で比較的楽であったが、それでも信号で停まると、1/3の割合でスタート時にエンストし、後続車に追突されそうになった。 そうこうしながら10km程走ると、カインズ富岡甘楽店を発見!困った時のホームセンター。ヒデには砂漠に浮かぶオアシスに見えた。とは言うものの、さすがに軸径φ10mmのM6特殊ボルトなんて置いていなかった。部材を物色すると、φ10mmアルミパイプとM6蝶ねじを発見。アルミパイプを適当な長さにカットし、組み付けてみるとジャストマッチ!耐久性も問題なさそうだ。復活したファイヤーブレードで、ヒデは吉井ICから上信越道に乗り、ウメ達の待つ高坂SAに向かった。こうして難を逃れはしたものの、おかげで貴重な時間が失われてしまった。 |
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実はヒデのファイヤーブレードは、数日前に車検を終えたばかり。これは人為的ミスなのか?構造的欠陥なのか?イタズラなのか?超自然現象なのか?今となっては真相は闇の中である。 |
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