渋峠で散りそうになったバンディット

(オユタのレポートその4)

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 何でも、今度のグレートツーリング外伝には、新参者が来るらしい。そいつのニックネームは、ヨージ。まだ20代の若造らしい。ふん、GTECメンバーと一緒に走ろうなんて、100年早いわ!
 ツーリング当日の朝、集合場所でオレの顔を見るなり、“ちょこん”と一応はお辞儀をしたつもりだろうが、首をちょっとすくめただけだぜ(※1)。若造め〜、ちょびひげなんぞはやしやがって(※2)生意気な野郎だぜ。そこでオレは言ってやったのさ、「Hey!ヨージ。ドラッグスターごときに、このオレ様のバンディット1250S ABS(※3)に付いて来れるのかYO〜っ!?」ってね。
 もちろんオレ様にとってヤツをぶっちぎることなど造作もないことさ。だが、GTECの鉄の掟によって隊列が決められている。もし後ろを走るヨージをぶっちぎろうとすると、前を走るGTECの面々を抜かし、一般車もぶっちぎることになっちまう。そんなことをしたのならばその代償は…、ぶるぶるぶる、さすがのオレ様でも震えがくるぜ。
  (中略)
 いよいよ渋峠。峠こそはバンディット1250S ABSの出番さ。まさに水を得た魚とはこのことだぜ。隊列の掟?ここじゃあそれは関係ねえぜ。要は、隊列さえ乱さなけりゃいいのさ。なぜなら、前を行くGTECの面々はリッタークラスのスーパーマシンを駆り、セミプロ並みの腕前ときた。オレ様のテク、バンディットのパワーとコーナリングフォースがあれば、奴らに付いていくのは造作もねえが、結果、ヨージはあっという間にバックミラーから消えるってことさ。
 峠を目前にした天狗山レストハウスで小休止の後、出発…しようとした時のことだ。あろうことか、バンディットのエンジンが突然吹けなくなっちまった。駐車場から出ようとしたが、歩道まで出た所で、ついにエンジンが止まっちまいやがった。
 ヨージがオレをみてニヤニヤと笑いながら横を通り過ぎていった(※4)。その瞬間気づいたのさ、「さてはヨージの奴、何か細工をしやがったな〜!?(※5)」なんてダーティーな男なんだ。そうだ、休憩中のあの時…(※6)。

※1:実際のところヨージは「どうも初めまして。ヨージと申します。宜しくお願いします。」と丁寧に挨拶してくれたのだった。
※2:ヨージに髭は生えていない。きれいに剃られていた。
※3:正しくはバンディット250。どうやら1とSとABSの文字が余計だったようだ。
※4:「あれっ、どうしたのかな。大丈夫かな。」といった感じで心配そうに見ていた。しかし、あらかじめこうなるかもしれないことは予告してあったので、先に行ってもらった。
※5:細工うんぬんの話ではなく、同様の不具合症状は、以前にも2度発生していた。1度目はよく覚えていないが、2度目は山形村のジャスコを出た時に発生、そのまま再始動するまで10分程度路肩に止まったままになってしまったのだった。
※6:力尽きたので、以降、フツーの文に戻します。

 さて、歩道に止まったままになったバンディット。アクセルを開けるが、エンジン回転は3,000rpm以上回ってくれない。アクセルを全閉にするとエンジンは止まってしまう。しかもアイドリングは不安定だ。小刻みにアクセルを開けたり閉めたりしてエンジンが止まらないようにする。なんとか3,000rpmの壁を打ち破るべく、振れるタコメーターの針が3,000rpmになった瞬間に合わせてアクセルを微妙に開ける。「いっけぇー!」だが期待むなしく、針がそれ以上を上回ることはないのであった。
 そんなこんなで何分その場に立ちすくんだのだろうか、しばらくすると…、フケター!ようやくエンジンは正常に戻り、発進。少し先の路肩で心配して待っていてくれた仲間と合流し、峠の上りへ。
 よ〜し、攻めるぞ〜!と意気込んだのもつかの間、紅葉シーズンの渋峠は混んでいた。トロい車列により、3,000rpm以下に落ち込みそうになる場面がずーっと続いた。エンジンが復活したとはいえ、この回転数を下回った時にまた止まってしまうような気がして、3,000rpmを下回らないよう、状況によってはクラッチを切ってアクセルを空ぶかししつつ、峠を上っていくのであった。
 すり抜けによって隊列は崩れ、いつの間にやら出現した、前を行く2人乗りのバイク、カップルだ。うーん、うらやましい。「なんだろなー、後ろのバイク。うらやましいから空ぶかししてあおってるのか?」と思われたかもしれないが、確かに半分は当たっている。にしても、なんだかバツが悪いバンディットなのであった。
 さて、そんなこんなでようやく白根火山ロープウェイ山麓駅駐車場に着き、バイクを停めて武具脱池(もののぐのいけ)を観光。ここでエンジンを切ってしまって大丈夫なのだろうかという不安はあったが、再出発の時にはエンジンが冷えているだろうから、その方がきっと問題ないであろう。そうに違いない!
 武具脱池からの出発時、バンディットを信じてセルを回す。エンジンは一発始動。いけるか?そして駐車場から道路に出ようとすると、自分だけタイミングを逸して徐行運転の観光バスの後ろになってしまった。GTECの他のメンバーがきびきびと発進していくのが見える。観光バスは一時停止、その後ろのバンディットも停まらざるを得ない。
 さて発進という時、またもエンジンは3,000rpmよりも吹けないのであった。ちょこちょこと駐車場の端に移動して、しばらく待機…。立ちつくすこと数分。やれやれ一体いつになったら発進できるのやら…。アクセルを開けたり閉めたり、を小刻みにやっていたが面倒になり、エンジンが止まらないくらいの低回転をキープしたら、おやおや、すぐに復帰した?
 とにかく復活。回転数を落とさないように、まるで初心者のごとく異様な高回転で半クラッチを駆使し、エンジンをうならせながら駐車場から道路へと躍り出る、よちよちした真紅のバンディット!うーん、なんだか恥ずかしい。
 それからは、前のクルマに追い付かないよう、時速30km、2速8,000rpmで走行。幸い単独での走行がしばらく続いたが、やがて後ろから車両が…。しかたなくペースアップして前車に追い付き、トロトロした流れに乗り、とにかく低速ギアを駆使して空ぶかしも織り交ぜつつ、高回転をキープ。むう?あのテールランプの列は!?また渋滞だー!こりゃたまらん。ここもどうやら観光ポイントのようで、駐車場待ちの長い車列ができていた。
 案の定、再びエンジンストール…。渋滞中に路肩で停止。だが既にコツはつかんだ。アクセル開度を抑え、アイドリング状態を続ければよいのだ。今までとは比較にならないほど短時間で復活!
 路肩には徒歩の人もずいぶんおり、ビッグマシン達はすり抜けもままならず、難儀していた。しかしバンディットなら行けそうだ。ウメに合図し、先に行かせてもらった。車の渋滞と人混みの中、空ぶかしでうるさくすり抜けをしていくバンディット。どうにもバツが悪い。
 その後は比較的すいていて、悠々と走って国道最高地点に到達。つまり、ここからは下り。下りなら大丈夫だ。助かった〜。標高が下がるに従って症状は改善され、やがて普通に吹け上がるようになった。
 どうやらこの不具合は標高が高くなり、空気が薄くなると顕著になるものと思われた。空気が薄くなるということは、相対的にガソリンが濃くなるということなのだろうか。
 実は、エンジン不調による整備はショップで総計3回行っていた。そのうちの2回はキャブレター関係の整備で、キャブ内のパッキン交換他のオーバーホールも実施。これには3万円弱掛かった。燃調を薄くしてもらったことにより、以前、高回転時に吐きまくっていた黒煙は少なくなったものの、パンチ力はなくなり、高山ではこの有様…。常時あった3,000rpmの谷間は、キャブのオーバーホール後、エンジンが冷えている時は調子がよくなったが(山麓駅駐車場ではこれを期待したのだ)、暖まると谷間が再発していた。
 このマシン、もういらない。しかしこんな不調のまま(本来の所有者たる)ド初心者の妹に返すのも気の毒ではある(標高の高い道路で遭難するかもしれない)。もう1回キャブの整備をしてもらうか?いや、これ以上のカネを掛けるのももったいないし…、一体全体どうしたものか…。
 次回のグレートツーリングまでに結論を出さねば!


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