グレートツーリング '97 in 紀伊半島 |
メンバー(マシン) | オユタ(CBR900RR)、カンちゃん(FZR250R)、ヒロ(CBR250 FOUR) |
オユタは「グレートツーリング '94 in 紀伊半島」でいちごワインを買ったが、途中の山道で落として割ってしまった。(エピソード「峠に散ったいちごワイン」を参照のこと。)「グレートツーリング '90 in 北海道」でも、彼は帯広の居酒屋で同様な苦い経験をしていた。そう、それは、クリーミーなピンク色をしたおいしそうな飲み物「ピンクシャワシャワ」を、全く口もつけないうちにグラスを落として割ってしまった、あの出来事である。ピンクシャワシャワは後日、地元松本の居酒屋で飲んだからよかったものの、いちごワインは貴志川(きしがわ)町にしか売っていないので簡単に飲めるわけではない。 そんなわけで、いつか貴志川町に再び赴きいちごワインを買ってこよう、とオユタはたくらんでいた。ウメにも「今年のゴールデンウィークは貴志川町に行こう。計画ヨロシク!」と誘いを掛けていたのだが、「いつもオレが企画してばかりじゃないか。たまには自分で計画して行ってみたらどうだい。」と冷たく(?)あしらわれたので、自分で計画して行くことにしたのであった。しかし1人では寂しいのでみんなを誘ってみたが、ウメとマコちゃんはソロツーリング、ヒデは仕事、と結局一緒に行くことになったのはカンちゃんとヒロだけであった。 オユタの自称優秀な頭脳により、計画は綿密に計算され組まれた。彼はツーリングには何回も参加していて経験豊富なのだからと、他の2人は安心していた。 そんなオユタの計画を元に、オユタとヒロは、ファミリーレストランのガストで最後の詰めを行なった。(カンちゃんは忙しかったので来られなかった。)「(オユタ)Aセット。」「(ヒロ)オレBセット。」「(オユタ)計画はこんな風にしてみたけど、どうかなあ。他の案とか、行きたいところとか、あるか?」「(ヒロ)(地図を見もしないで)うーん、いいんじゃないの、モグモグ。」「(オユタ)ドリンクバーって飲み放題だよなあ。よーし、次は2種類ブレンドしてみるかな!」こうしてコースは決定した。 だが、その緻密な計画にケチを付ける男が現れた。オユタは出発の数日前、マコちゃん宅に寄って、一応計画を見てもらった。いや、完璧な計画を自慢した。「(マコちゃん)いちごワインか!オレは飲んだよ。」そう、マコちゃんは「グレートツーリング '94 in 紀伊半島」の時にいちごワインを自宅まで無事運んだのだった。「(オユタ)…オレにも少し分けてくれればよかったのに。」「(マコちゃん)いや〜、甘かったぞぅ。ところで、真ん中の日はえらく距離が長いなぁ。300キロ超。うーん、一般道でこれはきついぞぅ。最終日も、長いなぁ!でも貴志川町が目的だから仕方ないのか…。それにしても、ツーリングは結構こなしているってぇのに、その経験が全く生かされていないような気がするが…。」ガ〜ン!オユタのプライドは砕け散った。急遽計画は変更され、2日目の距離を短くした。計画の不備。それは早速、暴露されてしまったのであった。 |
5月2日(金) | 天気:晴れ | ||||||
8時、長野自動車道みどり湖PAに集合。オユタは、滅多に買わない道路地図を手に、先頭で出発した。いつも、ウメの後ろを、はぐれないようにとくっついていくだけなので、オユタの中にツーリングのノウハウはあるようでいて、実は全くといっていいほどない!当然、地図など買ったこともないのである。 10時、中央自動車道恵那SAにて休憩。名古屋からは分岐が幾つもあり、オユタはオタオタしながら走行したが、何とか間違えずに伊勢自動車道の伊勢料金所で無事に高速を降りた。 14時20分、伊勢神宮に到着。内宮を見学。神馬様がいらっしゃる。お馬さんである。白馬で、白馬だから毛の色は白だが、後ろ足の間にぶら下がっている「御珍体」は黒く、大変立派であった。 次に外宮に行った。「そとみや」と読むのかと思ったら、「げぐう」と発音するのだ。ちょっと下品な響きである。 17時、三重県松阪市のユースホステル愛宕山に到着。お寺である。お寺の裏の建物が宿泊場所。古い建物だが、掃除はしっかりとされている。 松阪と言えば牛肉。当然、夜は外食で肉を食う予定だった。お寺のご住職から松阪牛の有名店を教えてもらった。イチオシが「和田金」、他に「三松」等、数軒の名前が挙がった。「(ご住職)でも、いい値段するよ。」 確かに、和田金は和風の高そうな店であった。今回のツーリングメンバーは比較的性格の穏やかな人間で構成されていた為、入るのがためらわれた。ビルになっていて、1階では肉を売っていた。値段を見たかったが、冷やかしで入るのさえもはばかられた。きっと、上の階の各部屋では、豪勢な接待が繰り広げられているのに違いない…、などと勝手に想像して、この店は断念した。 ぶらぶらと歩き、三松を発見。こちらは洋風の店で、意を決し入店。ご住職の話によると、ランク的には市内でも少し落ちるようなことを言っていたが、それでもメニューを見たらぶったまげた!1万円前後の品揃えが当たり前田のクラッカー! どうしようかと思ったが、据え膳食わぬは男の恥、旅の恥はかき捨て、馬の耳に念仏、ここまで来たら地元のうまいものを食いたい。3人の挑戦は始まったばかりである。オユタとヒロは、17,000円のステーキをオーダー!!しかし、ただ1人、いけいけムードをぶちこわす男、それはカンちゃん。「おれはこれでいいや。」と8,000円の赤身をオーダー。カンちゃんはしみったれなイメージがあるのだが、ここまで来てケチるとは、相変わらずな男である。(オユタ談) 出てきたステーキは高いだけはあり、もちろん、噂に聞く「霜降り」であった。コックさんが目の前の鉄板で焼いてくれた。鮮やかな手つきである。焼き上がり、一口大に切られ、ジュージューと油がしたたり落ちる、霜降り肉。いよいよ、その旨味に満ちた肉汁が染み出して来るであろう固まりを一口頬張る。嗚呼、まさに至福の時の到来なのか…!? 「(オユタ、ヒロ)んんーっ、これが松阪牛、霜降りねぇ…。」確かに柔らかい!ことには柔らかい…のだが…、「(オユタ)…なあヒロ、これあんまり旨くないのでは。」「(ヒロ)うーん、霜降りはやっぱり網焼きだなあ、しゃぶしゃぶとか。」油が多すぎて喉がスースーして不快。サラダ油をそのまま飲んでみると喉がスースーするあの感じ。 テレビでは芸能人が高級な霜降り肉を食し、うんちくをたれているが、あの人達はさすがである。高いものを食べつけている人は違うものだ。庶民なので高いものを食べ慣れていないだけかもしれない。そんな思いに捕らわれて、さも旨いように見せかけなくてはならないのか?「(ヒロ)いや、番組だから旨そうなふりしてるだけなんじゃないのか?こんな油っぽいの飽きちゃうよ。」 カンちゃんはどうなのか?一番ケチったカンちゃんは。「(カンちゃん)うーん、まあ、うまいよ。」「(オユタ)ちょっとくれてみ。」高級霜降りなオユタのひとかけらと、それの半額にも満たないようなカンちゃんの赤身を交換。「(オユタ)油が少なく食べやすい…じゃん。」カンちゃんの圧勝であった。 宿に戻り、ヒロは、「次回は和田金でスキ焼きだな。絶対食うぞ!」と意気込んでいた。 | |||||||
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5月3日(土) | 天気:曇り一時雨 | ||||||
「コケコッコー!」朝、かなり早くから宿の庭でニワトリがけたたましく鳴いていた。おかげで目が覚めてしまった、とカンちゃんとヒロは不満をたれていた。人間の本来の姿とは、お日様が昇ったら起き、お日様が沈んだら寝る。そんな生活を彼らはいつから忘れてしまったのだろうか。 7時30分、ニワトリたちに見送られ出発、高野山を目指す。オユタは相変わらずオタオタしながら走る。道が分からないので何度も路肩に停車すると、カンちゃんが地図を見ながら「この道はこうじゃないかな。」と、言い当てていた。どうやら、3人の中ではカンちゃんが一番、方向感覚は優れているようである。オユタのプライドは…もうなかった。 お昼時になると、雨が降ってきた。相変わらず道にも迷っている。オユタはどこぞのスーパーの自転車置き場に駐車、屋根の下で地図を確かめた。雨の中では地図を見ることすらもままならない。「このまま降り続くのぉ?かんべんしてよぉ。タイヤだって滑るしぃ!」そう思った3人だったが、天は彼らに味方したのか、やがて雨は止んだ。 昼飯は13時を回ってから取ることになってしまった。レストラン「チロル」。ふつーの味である。 道に迷いつつ、高野山金剛峰寺に到着した頃には既に14時を回っていた。連休中なので混んでいる。すり抜けを多用。バイクだから、路肩のちょっとしたスペースにチョチョイのチョイ、と駐車。庭に入ると、ちょうど平成の大修理をやっていたので、一部、見学できない建物があり、残念であった。入場料を払って中に入る。進んでいくとお茶とお茶菓子(入場料に込み)を振る舞っている広間にたどり着いた。ほっと一息である。更に進んでいくと、でかいこんにゃくが水に浸かっていた。お坊さん達が食べるものであろうか。 本日の宿泊先、千光寺ユースホステル。地図でいうと、高野山から北に数十キロも走る。これまたお寺である。マコちゃんの助言を得て行程を短縮したものの、道に迷い過ぎたせいなのか、えらく時間がかかっている。3人とも疲れがたまって嫌になってきていた。あとで確認してみたら、高野山にもユースホステルがあったのだ。明日は、また高野山へと引き返し、そして貴志川町に向かう。わざわざ余分な道を走っている…。 千光寺ユースホステルは分かりにくい場所にあった。住宅街で迷い、おじさんに道を尋ねた。おじさんの言う方向を目指すと、山道に差し掛かり、心細くなってきた。本当にこの道でいいのか?だが、うっそうとした森の中にそのお寺はあった、確かに。 着いたのは暗くなってからになってしまった。昨晩泊まった宿よりも場所は山奥だが、建物はきれいであった。部屋の天井は障子の桟のように正方形に仕切られていた。正方形のマスの中にはひとつずつ、道・智・提…さまざまな文字が書かれていて、各々に1名分、人名が添えられていた。習字した人の名前か?いや、この建物を建てるに当たって、寄付をした人々の名前なのであろう。なぜなら、字体が同じだから。ふとカンちゃんが、「いやー、お寺ってのは怖いねえ、雰囲気が。」と言った。日頃の行いが悪いので、バチが当たるのでは、と密かに心配しているのだ、きっと。(オユタ談) 夕食はお寺の若いお坊さんも一緒であった。何個かある土鍋にはダシ汁がはられていた。そこに、うどん・きのこなどをぶち込んで食うのだ。同じ宿に泊まっているらしい若い女性2人組が夕食に同席した。残念なことには、鍋は別であった。間接キッスの夢ははかなく消え去った。 若いお坊さんは一所懸命女性達に話しかけていたが、女性達は「はあ。そうですね〜。」みたいな、あんまり話に乗ってあげていなかったのが、3人の印象に残った。とかく生身の女性というものは、扱いづらいものである。 | |||||||
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5月4日(月) | 天気:曇り | ||||||
いよいよ今回の旅の目的である「いちごワイン」を手に入れる日がきた。気合い充分!! 庭の水飲み場みたいな所にひしゃくが置いてあったので、口をすすいでみる。池のほとりには小さな石仏が。お賽銭をあげてみる。山の斜面には3体の石仏が。手を合わせてみる。おや、野良猫が。戯れてみる。 そうこうしているうちに、出発は9時となった。R168を南下し、高野山の北側(R24)まで戻り、そこからなぜかR371を一旦北上し、河内長野経由で貴志川町を目指すという、なんとも不可解なルートだ。さすがは練りに練ったプラン?誰も異議を唱えないのが不思議である。 13時、河内長野のローソンで休憩。岸和田市でまた道に迷う。片側2車線道路で信号待ちの時、オユタは、右隣に止まっていたアベックの車に道を尋ねてみた。助手席の若い兄ちゃんは因縁を付けられたと思ったのか、びっくりしたようだったが、「ぼ、僕らもここらの人間じゃないんで…。」「あ、そうですか、どうも。」 仕方なくオユタは、地図を見て見当をつけた道、府道40号線だかに入り、そのまま川に沿った道を進む。山に向かう道。道幅が広くなったと見るや、やがて路駐の車がやたらと増え、キャンプ場みたいになった。たくさんの人々が休日を過ごしている。それは別に構わないのだが、困ったことには、道はそこで途絶えていた。地図を見ると確かにそうなっている。引き返すしかない。 13時30分頃昼飯を食い、貴志川に着いたのは14時過ぎであった。さっそくビニールハウス内に作られたうねに入り、いちご狩りをした。フルーツ狩り、と言うものは気合いを入れてお腹をすかせて行っても、すぐに飽きてきて腹がいっぱいになってしまう。 いちご狩りは一段落して、念願だった「いちごワイン」をついに手に入れた!淡い紅色にお日様の光が透き通るそのワイン。「(オユタ)ああ、早く飲みたい…。」しかし今飲むわけにはいかないのだ。なぜなら飲酒運転になってしまうから。誘惑に耐えながらいちご狩り農場を後にするオユタ。そしてこんな時間に出発して、帰りは一体何時になってしまうのかと心配するカンちゃんとヒロ。県道63号線(泉佐野岩出線)を北上し、泉南ICから3人は高速に乗った。阪和自動車道→近畿自動車道→名神高速→中央自動車道→長野自動車道のルートで帰るのだ。 16時近く、阪和自動車道の岸和田SA到着。オユタは、駐輪場の柱にウィンカーをぶつけ、もいでしまった。ヒロにガムテープをもらって応急処置。これでは300km/hは出せない! 高速道路は混んでいる。走行車線と追い越し車線の間を、慎重にすり抜けしていくオユタ。バックミラーを見る。結構な勢いですり抜けをしてくるバイクのライトが見える。オユタは道を譲ったが、「けっ、生意気な、あおってやるぜ。」とばかりに、そいつの後ろをついていこうとした。が、あまりに速かったのでやめた。直後、更にすり抜けのバイクが接近。やり過ごしてみたら、軍団である。これまた速い。どうやらさっきの一台と同じグループらしい。所沢近辺ナンバーの構成である。 最後尾のバイクに何とかついていこうとするオユタ。車の流れが100km/h程度になるまで、右へ左へヒラヒラと、走行車線と追い越し車線の車の間をスラロームしていく軍団。ぶつかるのではないか。恐ろしい。必死で遅れまいとついていくオユタ。こんなすり抜けは初めてだ。カンちゃん、ヒロはとっくに遙か後方に見えなくなっていた。 名神高速の養老SAに着いた頃にはすっかり暗くなっていた。必死のすり抜けも空しく、ほんの数分でカンちゃん、ヒロが到着。「スゲーすり抜けをする軍団がいたぞ!」興奮さめやらぬ様子で話すオユタ。「(カンちゃん、ヒロ)ふーん、あ、そ。」さめていた。 21時、中央自動車道恵那SA着。わざわざ持参した低周波治療器で肩を刺激するオユタ。寒いので、カッパを装着。23時45分、長野自動車道みどり湖PA着。3人は、ここでお別れをした。到着は深夜。大変に疲れた。3人は心の中で思った。「次回は余裕を持った計画にしよう。」と…。 |
グレートツーリング '97 in 北海道 |
メンバー(マシン) | ウメ(ZZ-R1100)、オユタ(CBR900RR) |
できれば直江津、せめて新潟、それもダメなら東京から北海道行きのフェリーに乗りたかった。その為にかなり早い時期からフェリーの予約にチャレンジしたのだが、あえなく玉砕。帰りもダメ。さすがにお盆の時期に北海道に行くのは大変だ。ようやく仙台、苫小牧間のフェリーが往復で確保できた。仙台まで行くだけでも結構なロングツーリングである。 今回の北海道ツーリングは富良野に4連泊し、富良野、美瑛を満喫しようという目論見である。 |
8月10日(日) | 天気:晴れ一時雨 | ||||||
8時、ウメの家に集合し、2人は仙台目指して出発した。 豊科ICから長野自動車道に乗って北上する。上信越自動車道終点(もうすぐ北陸自動車道とつながるはずだ)からR18に入って上越ICに向かう途中、突然激しい雨が降り出した。ついさっきまでいい天気だったのに…。2人は仕方なくカッパを着た。 雨は北陸自動車道から磐越自動車道に入っても降り続いた。磐越自動車道もまだ未開通であり、津川ICで一旦降りなくてはならない。その津川ICでやっと雨が止んだ。会津坂下ICで再び磐越自動車道に乗り、磐梯山SAで昼食タイム。雨が止んだとたん、気温がみるみる上昇してきた。暑い! 猪苗代磐梯高原ICで磐越自動車道を降り、R115で東北自動車道福島西ICまでショートカット。途中の土湯峠はけっこうなワインディングなのだが、反対側からの登りがおもしろいのだ。帰りも同じ道を走る予定なので、楽しみにとっておこう。 福島西ICから東北自動車道に乗ってすぐ、吾妻PAで休憩。そういえば、2年前の「グレートツーリング '95 in 東北」では、お盆の帰省ラッシュに遭遇して、ここで給油するのにえらく時間がかかったものだ。さすがに今年はまだ時期が早いので道は混雑していない。 仙台南ICで東北自動車道を降りると、まだ時間がたっぷりとあったので、仙台市内の青葉山公園に寄った。ここには、広瀬川を堀にした青葉山の上に高々と石垣を残す伊達氏62万石の居城跡がある。伊達正宗の騎馬像前で記念撮影した。ここからは仙台市街がよく見渡せる。しかし暑い!暑過ぎる!早く涼しい(たぶん)北海道に行きたいと思う2人であった。 20時、太平洋フェリー「きたかみ」は仙台港を後にした。目指すは苫小牧。 | |||||||
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8月11日(月) | 天気:雨のち曇り | ||||||
10時45分、フェリーは苫小牧港に到着した。いきなり雨が降っている!しぶしぶカッパを着て上陸。 とりあえず苫小牧駅に行き、早々とカニ等のお土産を買って宅急便で自宅に送った。今回の北海道ツーリングは富良野に4連泊の予定なので(つまり内陸部)、海産物を買うなら今の内という訳だ。別に帰りがけでもいいのだが、買い物をしている時間があるという保証はない。ツーリングは何が起きるか分からないのだ。無難にいこう。 お土産を買っていたら昼時となったので、そのまま駅の近くのラーメン屋で昼食とした。2人が頼んだカニラーメンにはでっかいタラバガニの足が入っており、なかなかのお味であった。 もしかしたら雨が止むのではないかという淡い期待を抱いて待ってみたが、そのような気配はないので、仕方なく出発した。R234からR274に入って東進する。夕張のドライブインで、メロン関連のお菓子を試食しまくった。オユタは「トモちゃんへのお土産にしよう。」とメロン味のキャンディーを購入した。トモちゃんが大のメロン嫌いということを知っているのに…。意地悪な奴である。 日高町からR237(富良野国道)を北上し、1時間程走ると富良野市に突入。R38に入ると雨が上がった。しかしいつ降り出してもおかしくない状況だったので、そのまま富良野ホワイトユースホステルまでの約20kmはカッパを着たままで走った。(結局降られなかったけど。) 宿にチェックインした後、オーナーのご好意で水道を使わせていただけたので、汚れたバイクを洗車した。洗車中、ウメはZZ-Rのリヤタイヤからなにやら“シュ〜”という嫌な音を聞いた。見ると太い釘が刺さっている。さっそく持っていたパンク修理キットで修理し、近くのガソリンスタンドで空気圧を調整してもらった。荒野の真ん中で空気がなくなっていたらと思うとぞっとする。 | |||||||
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8月12日(火) | 天気:雨 | ||||||
雨である。回復の見込みはない。それどころか、週間天気予報も最悪だ。既に数週間北海道を廻り続けているライダーと話をしたが、今年の北海道の夏は異常だという。8月に入ってからというもの、どこに行ってもず〜っと天気が悪く、全く雨に降られなかった日はないそうだ。 今回の北海道ツーリングは富良野に4連泊するが、その中の行動予定は特に決めていなかった。大雑把に行きたい所をピックアップしてあっただけである。おかげで、今日みたいな天気の悪い日にも柔軟に対応できるわけだ。雨の中、わざわざカッパを着て辛い思いをすることもない。とりあえず2人は傘を差して宿の近くにある「北時計」という喫茶店に行き、ここで今日の行動予定を協議した。 北時計は緑の中に建てられたログハウスで、なかなか雰囲気のよい店であった。これからカッパを着てバイクで次の目的地に向かう必要がない、ということも2人を更にリラックスさせた。結局、まずはレンタカーを借りることに決定。連泊の成せる技である。 ユースホステルで、提携のレンタカー会社に連絡すると、送迎用のベンツに乗ったオネーチャンが登場。会社まで乗せていってくれた。で、借りたのは日産マーチのオートマ。これで雨でもヘッチャラだ。レッツゴー! まずは「北の国から資料館」に行った。ここは毎年夏に富良野市街の空き倉庫で、テレビドラマ「北の国から」の様々な資料を展示しているのだ。衣装からクルマまで、ドラマで実際に使用された数々の小道具、再現された小屋のセットを眺めながら、ウメは懐かしさに浸っていた。そう、ウメは「北の国から」の全作品をレーザーディスク、ビデオで持っているほどの大ファンなのだ。オユタは別に大したファンでもなかったが、嫌いでもなかったので、そこそこ楽しめた。 クルマは富良野市街を離れ、R237を少し北上した所にある、ファーム富田を目指す。道中、雨は相変わらず激しく降っている。そういえば、さっきのオネーチャンが、北海道のレンタカーが“れ”ナンバーなのは(普通は“わ”ナンバー)、運輸省だかでレンタカーの割り当てのひらがなを北海道のお役所に知らせる時、ファックスを使ったのだが、“わ”を“れ”と誤読されてしまった為らしい。なかなか興味深い話であった。 ファーム富田に到着。ラベンダー畑は…、みごとに終わっていた。花は完全に収穫され、黒く無残に枯れたラベンダー達が2人を迎えてくれた。それでもラベンダーの加工工場や物産センターを見たりした。 お次は拓真館。美馬牛の駅の辺りでR237を右折し、丘陵畑地帯を走る。晴れていればすばらしい景色、いや、雨でもそれなりにいい景色だ…と脇見運転は事故の元。ウメは危く対向車とぶつかりそうになった。(相手も「れ」ナンバーだった。) 拓真館は著名な写真家達による富良野を題材にした写真が多数展示してある。観光バスが次から次へと到着し、大勢の観光客がベルトコンベア―のごとく流れていき、せっかくの写真も落ち着いて鑑賞することができなかった。ライダーも何人か来ていたが、脱いだカッパやヘルメットの置き場所に苦労しており、表情も暗い。「(ウメ、オユタ)いやぁ、雨の日はクルマに限るねぇ。」 拓真館を後にしたのが13時過ぎ。R237に復帰して南に向かい、適当にレストランに入って昼食とした。北海道産の牛肉ステーキに舌鼓を打つ。安さも魅力だった。 まだ時間はある。次はどこに行こうかと、とりあえずクルマをスタートさせてすぐに目に入ったのがトリックアート美術館。「(ウメ、オユタ)寄ってみるか。暇だしな。」けっこう期待しながら入っていった。 トリックアート美術館は「観て!!触れて!!撮って!!楽しむ不思議体験と感動の世界。」がキャッチコピーである。「絵画をメッセージとして捉え、二次元の世界に三次元の世界を誕生させる立体表現で、アートを親しみのあるものにした。」のだそうだ。しかしだまし絵のおもしろさはそこそこあるのだが、絵に感動することはなかった。それもそのはず、しょせんは壁にペンキで描かれたレプリカの絵。作者の魂など伝わってはこなかった。考えてみれば、トリックアート美術館って全国各地にあるではないか。いくら暇とはいえ、わざわざ北海道で観るべき物なのか?入場料1300円は暇つぶしにしてはちと高かった。 宿泊客で混まないうちにコインランドリーで洗濯をしてしまおうと、トリックアート美術館から宿に直行した。(レンタカーは宿まで引き取りに来てくれた。) | |||||||
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8月13日(水) | 天気:雨のち曇り | ||||||
昨日の夜、ユースホステル主催の空知川カヌーツアーを募集していたので、思わず2人は募集してしまった。これも連泊の成せる技である。 朝、小雨が降っていたのでカヌーは中止かと思っていたが、10時前には止んで、ツアーを委託されているアウトドア関係の会社のインストラクターが迎えに来た。インストラクターは、いかにもアウトドアっぽいひげ面のオジサンが1人である。参加メンバーはウメ、オユタの他には、埼玉県から来ていたOLがたった1人だけであった。さすがにこの天気では致仕方あるまい。 カヌーを2艘載せたワンボックスカーに乗り込み、R38を空知川に沿って北上する。13kmくらい走った所にある野花南大橋を渡ってすぐに左折し、出発地点に到着。全員でボートを下ろして空知川の岸辺に運んだ。川はここ数日の雨で増水し、茶色く濁っていた。しかし流れは速くないので、恐怖心はなかった。ライフジャケットを装着し、“ひげさん”の指導を受け、いよいよ「出港」!カヌーは2艘なので、必然的に2人1組となる。ひげさん、OL組とウメ、オユタ組だ。 前後に座り、呼吸を合わせてオールを漕ぐ。方向を変えるのにもテクニックが必要で、最初はなかなか思うように進んでくれなかった。さすがに1人で漕ぐ湖の貸しボートとはわけが違う。しかしそこは小学校以来の親友である2人のこと、みるみるそれらしくなってきた。2艘はなるべく離れないようにして川を下る。しばらくすると、野花南湖に突入した。ここはダムによって空知川が湖のように膨らんだ部分である。その湖の面積は雨水によって増大しており、普段なら見ることのできる鳥達のコロニーも水没していた。砂浜にカヌーを乗り上げて、用意されていたお弁当でランチタイムとした。「本当ならすっごくきれいなのに、残念だなぁ。また来てよ。」とひげさんは言ったが、けっこう2人は満足していた。昼食後、湖の眺めがきれいな場所を経由しながらカヌーを漕ぎ、やがて終着地点に着いた。北海道でカヌー…、天気のいい日にまたやってみたいと2人は思った。 宿に戻って来たのが14時半。まだ時間があるので、雨がいつ降り出してもおかしくない空模様ではあったが、バイクで近場を廻ることにした。 まずは富良野小学校に行き、北海道中心標の記念碑前で記念撮影。本当にここが北海道の正確な中心地点なのかどうかはさておき、富良野は「北海道のへそ」をウリとしており、“へそ祭り”を毎年開催している。 次は麓郷の森に行った。オユタは「グレートツーリング '90 in 北海道」以来、ウメは同ツーリングと昨年の「グレートツーリング '96 in 北海道」以来3度目の来訪である。富良野といったらここだけは外せないであろう。売店が増え、年々ケバケバしくなっていくような感じである。 「北の国から」五郎さんの5番目の家も見に行ったが、ロケ中で近付くこともできなかった。仕方ないので富良野ジャム園に寄って試食のジャムをなめまくった後、「北の国から '92 巣立ち」で、雪子おばさんが子供を連れて五郎さんと雑草の中を歩いた場所を見た。 帰り道、やはり「北の国から」でおなじみの「中畑木材」、「フェニックス牧場」にも寄った。 | |||||||
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8月14日(木) | 天気:曇り時々雨 | ||||||
今日の天気予報は曇り。しかし朝食時、既に雨が降っている…。しばらく宿でのんびりしていると、9時半くらいになって雨が止み、道はドライになった。すかさず2人は層雲峡に向けてバイクで出発した。層雲峡は「グレートツーリング '90 in 北海道」の時に、雨で見ることができなかった地である。今回こそは! R237を北上し、旭川でR39に入る。いつ雨が降り出してもおかしくない空模様。「(ウメ、オユタ)頼む、降らないでくれ〜っ!」 2時間ちょっとで層雲峡に到着。「流星の滝」、「銀河の滝」、「雲井の滝」等々を眺めた。なかなか勇壮な景色ではあるが、このレベルであれば、2人の地元長野県では珍しくもない。通りがかりならいざ知らず、わざわざここを目的地として行くほどの価値があるのか? 2人共、北海道に来たからには、地元にはないものを求めているのだ。それは 1. 手付かずの雄大な自然 2. 果てしない地平線 3. 広大な畑や牧場 4. 北海道ならではのおいしい料理 5. 素敵なギャルとの出会い などである。無論、1番重要なのが5であるのは言うまでもないが、層雲峡は1を期待していたのだ。しかし渓谷を貫く国道は観光バスでごった返し、ひっそりとした雰囲気はない。いくら北海道とはいえ、苦労せずにそうそうすばらしい景色は手に入らないのであろう。大雪ダムでUターンして帰路についた。 そういえばまだ昼食を摂っていなかった。っとそこに飛び込んできたのは「ラーメン日本一の町 上川町」という看板。日本一とまで宣言されては確かめないわけにはいかない。間もなく、R39とR237の交差点付近に「愛山渓ドライブイン」を発見。「ラーメン日本一」とでかく書かれており、さも自信ありげ。ここに決定だ。 長い行列とまではいかないが、店内は満席状態で、少し待たされた。待ちながらお客さんの注文を聞いていると、ノーマルなしょうゆラーメンが圧倒的に多いようだ。つまり、それがこの店で1番人気があり、1番うまいメニューということになる。というわけで、席に着いた2人は、迷わずしょうゆラーメンを注文した。そして出てきた一見オーソドックスなラーメン、まずはスープを飲む。うまい!麺は?完璧だ!文句の付け所がない!オーソドックスなメニューほど特徴を出すのが難しいものだ。ではここのラーメンの特徴はと聞かれても、うまく答えることは出来ない。特徴はないのかもしれない。しかしうまい。この一言で充分であろう。上川町、あなどれない町だ。機会があったら他のラーメン屋もチャレンジしてみたいと2人は思った。 往路はまともに旭川市街を突っ切ったが、けっこう街中は混んでいたので、当麻町から東神楽町に地図を頼りにショートカットした。ここら辺の道は碁盤の目のようになっており、適当に走っても、方向さえ合っていれば目的地に着いてしまう。美瑛のコンビニで休憩し、まだ時間があるから美瑛を見ていくか、と話していたら、雨が降り出した。しかも激しく…。ガックリ肩を落とした2人は、カッパを着て宿に直行したのであった。 | |||||||
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8月15日(金) | 天気:曇りのち晴れ所によりにわか雨 | ||||||
いよいよ北海道最終日である。8時30分、出発。まずは昨日見れなかった美瑛に向かった。 曇り空ではあるが、雨が降る雰囲気はない。美瑛では、ケンとメリーの木やセブンスターの木、マイルドセブンの丘など、絵ハガキになりそうな風景を廻った。しかし、美瑛はレンタル自転車でゆっくりと走ってこそ満喫できるのではなかろうか…と2人は感じた。実は美瑛に連泊したかったのだが、どこの宿も予約で一杯だったのだ。 フェリーが出る苫小牧までは、ここから芦別に出て、夕張までR452で南下するつもりである。地図を見ると、少し南下した豊郷から野花南のR38までショートカットできる道道70号線が載っている。この道はけっこうなワインディングのようだ。今回のツーリングでワインディングをまともに飛ばしていない2人は、これは楽しみだとR237から道道70号線に右折していった。 センターラインがある幅広な真新しく舗装されたこの道は、期待通りであった。他に走っているクルマは1台もなく、かなりハードに攻め込むことが出来た。…っと突然舗装が切れ、砂利道になってしまったではないか!?まだR38まではけっこう距離がある。道理でやけに舗装がきれいで、他に誰も走っていないわけだ。最近までは全線未舗装だったのであろう。入り口から未舗装ならやめたに…。2人は路肩にバイクを停め、引き返そうか協議した。そして、この道をトロトロ走っていったとしても、富良野経由で国道をぐるっと回り込むよりも早いであろうという結論に達し、そのまま先に進んだ。しかし道はだんだんひどくなり、ヘアピンカーブでは、軽くアクセルを開けただけでも砂利でリヤタイヤが空転した。その横を、凄い勢いでオフロードバイクの一団が抜いていく。あと少しでR38だという所で、砂利道は泥道へと変貌!「(ウメ、オユタ)かんべんしてくれ〜!」ほとんどアイドリングで進んでいる。北海道では、いくら地図上ではしっかりとした道に見えても、確証なく迂闊に進入しない方が身の為である。 なんとかR38に出て、芦別の道の駅で休憩とした。恐るべし道道70号線!一気に疲れてしまった。アンダーカウルやマフラーは泥だらけだ。 道の駅の物産センターからふと外を見ると、何と雨が降っているではないか!?ついに北海道で雨に降られなかった日はなかったのである。まだ先程の未舗装路で降られるよりはましか、としばらく様子を見ていたら、雨は止み、太陽が姿を見せた。そして路面は一気にドライに。すかさず出発した。 夕張までR452を南下する。延々と山間部を走る道で、交通量が少なく、先程の雨は何だったのだ?というくらいいい天気になってしまった。これでゆっくり走れというのも無理な話だ。もしもねずみ捕りをやっていたら、罰金はとんでもない金額になるであろう…っとまたもや未舗装路に!! 「(ウメ、オユタ)またかよ!国道でもこれかい!」それでもしっかりと固められた路面だったので、制限速度で走ることはできた。 砂塵を撒き散らしながら走っていると、ウメが前方に何やらうごめくひとつの物体を発見した。キツネである。停車して写真を撮ろうとしたら、そのやせ細った小汚いキツネは、頭をたれながら近寄ってきた。どうやら餌をねだっているようだ。野生の動物に餌を与えるのは御法度なのに、観光客のマナーが悪いのであろう。おかげで人間を全く恐れていない。記念撮影だけして2人はその場を立ち去った。ちなみにその後、キツネは何匹も目撃した。 未舗装区間は僅かであった。再び快適なワインディングが続く。夕張の付近では、廃墟と化した村もあった。炭鉱が閉鎖される前は活気に溢れていたことであろう。夕張のレストランで遅めの昼食。 R274に入ると、あとは北海道上陸初日と逆コースで苫小牧に向かった。そして16時にはフェリーターミナルに到着し、乗船手続きをした後、のんびりとしていた。出港は18時30分。 北海道滞在最終日、なかなか気持ちよく走れて(一部分悲惨な思いもしたが…)よかったと思う2人であった。 | |||||||
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8月16日(土) | 天気:晴れ所によりにわか雨 | ||||||
9時、仙台にフェリーは到着した。あとはまっすぐ帰るのみ。往路と全くの逆コースで行く予定だ。さすがに本州は暑い! 仙台南ICで東北自動車道に乗り、福島西IC からR115に入って猪苗代湖を目指す。土湯峠は帰路で唯一のワインディングなので、気合を入れて走るぞっ、と…何やら冷たいものがポツリポツリ…。さっきまで晴れていたのに、一気に空が暗くなり、激しい雨が降り出した。あわてて路肩の木の下に退避したが、なかなか止みそうにない。この場所も長くは雨を防ぎきれそうになく、しぶしぶカッパを装着。慎重に峠を越えた。峠を完全に下りきった頃、ウソのように雨は止み、青空が姿を見せた。振り返ると、峠の部分だけが黒い雲に覆われている!何者かが2人の楽しみを妨害しているのに違いない!? その後は北陸自動車道まで順調であった。しかし先程、楽しみを雨に奪われたことによるストレスが抜けず、上越ICを通り越し、糸魚川ICで高速を降りてR148に入り、白馬村経由(新潟、長野の県境はけっこうなワインディングである)で明るいうちに無事、2人とも家に帰ったのであった。 今回のツーリングは、7日間全て雨に降られるという不遇に見舞われたが、おかげで普段のツーリングとは違った楽しみ方を発見することが出来たといえよう。 |
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