チェーンの切れ目が縁の切れ目?

(オユタのレポートその5)

BANDIT2.jpg

 大枚をはたいて大規模なキャブレター回りの整備を行い、本来の調子を取り戻したはずのバンディット250<リニューアルバージョン2009>。しかし、まだまだ課題は山積みだった。
 溝が少なくなっているタイヤは、なかなか減らないのはいいが、経年変化によって溝の奥がひび割れている。
 リヤダンパーは徐々にオイルが漏れており、こういった状態では通常バネしか効いていないので、段差など越えた時はピョンピョン跳ねるような挙動となるらしく、その為、80km/h以上での走行は危険だ…、との診断を受けている。でも新品は高い。オーバーホールなら少し安いが、専門の業者に出して再メッキするので、多少の時間を要するらしい。いずれにせよカネが掛かるので、そのままに。
 何より、チェーンの片延びがひどい。うっかり延びている部分で調整してしまうと、延びていない部分でピンピンになり、はち切れそうである。よって、延びていない方で合わせるのだが、今度は延びている部分が今にも外れそう…。いや、チェーンの調整範囲としては限界ではないから、まだまだ使えるはずだ。第一に、我が家の財務大臣からの許可が出ないのだ。「夏のボーナス出てからね。」このご時世、ボーナスが出るのかどうかも定かではないが、今回のツーリングだけは耐えて、帰ってきたら修理に出すしかない。
 今回のツーリング…、それは「グレートツーリング '10 in 九州」。事前に(自分で)整備し、もちろん“まだまだ使える”チェーンの張りも調整したので、これで問題ない…、はずだった。ところが、どうにもこうにも、このチェーンの調子が悪い。ガシャガシャゴキゴキいうのは当たり前。減速する時のエンジンブレーキでチェーンが外周に膨らみ、樹脂カバーに擦る異音がギュルギュルギャンギャンと激しい。
 早急にチェーンの張りを再調整する必要がある。でも工具を持っていない。GTEC結成当初は、もしものことを考えて、ロングツーリングにチェーン調整用のメガネレンチを携行した時期もあった。しかし、もしものことなんてなかったし、そんなものはパワーウエイトレシオが悪化するだけだから、その時以来は携行していない。それに、カネを払ってバイク屋さんに頼めば済むことだ。とはいえ、ツーリング先でバイク屋さんを探すのは面倒だ。第一、整備不足から隊列を崩すなんてことは、GTEC鉄の掟に逆らうことにもなりかねない。エピソード「三才山に散ったγ」では、他のメンバーに迷惑を掛け、“委員会”にこっぴどくしかられたものだ。その制裁といったら…、思い出しただけでも身震いがする。という訳で、ツーリング2日目の休憩時に寄ったコンビニの隣のホームセンターでチェーンルブを購入して吹き付け、様子を見ることにした。
 チェーンルブによって、少しはスムーズになったものの、相変わらず音はやかましい。そのうち、樹脂製のカバーは摩擦によって穴が開くのではないだろうか?と心配になるほどだ。
 奥ゆかしく、イマドキでいう草食系男子、といった印象のヒロ。(いや、我々の知らない私生活では、肉食系なのかもしれないが、)主義主張も控えめな優しい男で、滅多に他人のことに口は出さないのである。すぐ後ろに隊列を組んでいた、そのヒロですら、見るに見かねて言ったものだ。「(心配そうに)チェーン、外れそうなんだけど…。」ヒロはその昔、ZX-4に乗っていた頃、走行中にチェーンが切れてしまったことがある。そんな経験をしている彼だからこそ、当時の自身の姿を、前走するバンディット250に重ね、心底心配してくれたのだろう。…っていうか、チェーン切れたらヒロにとばっちりが!?
 ツーリング5日目、コンビニで休憩中にヒロがまた言った。「(心配そうに)スイングアームのカバーが外れそうなんだけど…。」何と、チェーンにばかり気を取られていたら、今度は右側スイングアーム後端を覆う金属製のカバーのネジが緩み、今にも外れそうだ!サンキューヒロ!…っていうか、カバーが外れたら、やはりヒロにとばっちりが!?

カバーが外れそうなんだけど…
 その後もなんとか凌いで、ツーリングは最終日を迎えた。徐々に仲間達と別れ、自宅最寄りの長野自動車道豊科IC(インターチェンジ)で高速を降り、最後はヒデと2人で「鹿児島ラーメン」を食って締めることとなった。
 ICすぐ近くの「鹿児島ラーメン」。昔は松本駅の近くにある系列店をよく利用していたものだが、ここ十数年はそれもなく、豊科店は初めてだ。個人的には激ウマというほどではないが、独特の味噌の香りが程良く、「ああ、こうだったっけか。」と、帰宅前の最後の休憩で、それなりに味を楽しみ、ヒデともお別れをすることに。ヒデのファイヤーブレードよりも少し先に発車した。
 すぐに信号があり、右折となる。右折レーンで待っていると、(直進の)ヒデが手を挙げて通り過ぎて行った。「家に着くまでが遠足だ。気をつけて帰るんだぜい!」とのメッセージが伝わってくる。
 間もなく対向車が途切れたので、アクセルを軽くあおる。前年、キャブレターのオーバーホールを敢行したので、エンジンは軽い吹け上がり。クラッチを僅かに繋ぎ、車体を右に傾けつつ、人車一体となる。二輪車で曲がる時には遠心力に打ち勝たなくてはならないが、それは低速の交差点右折でも変わらないものだ。
 突如として、「バギッ!」っと激しい異音が!
 (えっ!?何の音!?)
 訳も分からず反射的にクラッチを切り、何かカラカラといいながら惰性のまま、ゆるゆると、右折だけはしたので、すぐにバイクを路肩に停車する。
 「どーなってるの!?」
 エンストしていたので、セルモーターを回してみたが、「カチッ」というだけで、全然回らない。仕方がないから、バイクを下りて見ると、チェーンが外れていた。

外れたチェーン
 そーか、単純にチェーンが外れたのだな…。無事にたどり着いたと思ったが、大きな間違いだった。やはりチェーンに無理が来ていた。ついにここでそのしわ寄せか。
 その時は、まだまだ軽い気持ちでいた。要するに、チェーンを元通りにしてやればよいのだ、…と。多少の手間は掛かるだろうが、できないことではないだろう。外れたチェーンなら、何回も直したことがあるから、へっちゃらさ。(ただし自転車だけど。) 直した後は、再び外れないように気をつけて走行するだけのこと。すぐ目の前、居酒屋さんの駐車場の隅に勝手に停めさせてもらい、車載工具を引っ張り出す。
 車載工具。ヒロがこのツーリング中、言ったものだ。「バイクの車載工具って、基本的に全ての整備ができるようになっているらしいよ。」へー。とその時はサラッと聞き流したが、その車載工具、よく見ると、チェーンの張りも調整できるような物が揃っているではないか!? ヒロの言ったことは紛れもない事実だったのだ。あるんだったら、ツーリング中にさっさと使えば良かった…。後悔してももう遅い。
 気を取り直して、エンジン側のスプロケットのカバーを外してみたら、チェーンがつづら折りに重なり合って、スプロケットとエンジンのアルミブロックとの隙間に詰まっている。「なんじゃ、こりゃ?」チェーンがボロなので動きが渋く、ある1個のコマが引っ掛かり、そこへ後続のコマが詰まってしまったのに違いない。これはただ単にチェーンが外れた、という状況ではなさそうだ。ガッチリと密集していて、全く動かない!さらに悪いことに、カバーの内側に、何やら金属の棒が転がっており、断面に金属疲労の痕が見てとれる。クラッチレバーを握ってもスカスカして暖簾に腕押し状態で、全く手応えが感じられないこともあり、どうやら、クラッチレバーの動力をこのシャフトで伝達するようだ。それが、折れているのだ。こ、これは、つまり、
 走行、不可能ォォォ!Oh、NOォォォ!

外れたチェーン(エンジン側)
 しばし考える。
 …いかに250ccとはいえ、ツーリングで疲れ切っている体で自宅まで残り数kmを押すのは厳しい。さっき別れたばかりのヒデは走行中だろう。妻…、あてにならない。同じく豊科ICで降りたウメは、とっくに家に着いているだろうが、それは体調不良で我々とラーメンを食べずに直帰したからだ。きっと今頃はふとんの中でうめいていることだろう。そうだ、家には父がいるはずだ。個人で携帯電話を持っておらず、会社から貸与のケータイはあるが、これを私用で発信してはいけないので、すぐ横のコンビニから、最先端の技術を盛り込んだ夢のハイテクカード「テレホンカード」と、やはり近未来を感じさせずにはいられない、緑色テレフォンを駆使。幸いにも父在宅。ということで、軽トラックで父に来てもらった。
 軽トラ(けっとら)にバイクを積む…。ふと、忘れかけていた悪夢が頭をよぎった。いつぞやヒデと参加したジムカーナ大会の帰り、自宅前で夜間、軽トラから(当時乗っていた)ファイヤーブレードを降ろす時、桟橋から道路へと落下させてしまい、「ゴワシャッ!」という大音響と共にカウルが割れ、ハンドルのエンドがひん曲がったものだ。
 しかし、とにかく父と2人がかりで慎重に桟橋を進み、バンディットは無事に搭載できた。ふー、よかったよかった。
 気温もだいぶ上昇している中、居酒屋さんの開放された窓から中を覗き込むと、仕込み中だろうか、店員さんたちが忙しく動きまわっている。その窓から店員さんに声を掛け、駐車場をお借りしたお礼だけ言って、軽トラで帰宅した。
 それにしても、一歩間違えば、かなり危険な状況だった。チェーンが外れてフリーとなり、後輪が空回りしてくれたからよかったものの、外れなくて後輪ロックともなれば、対向車線上でコケていたかもしれないのだ。そして、なんといっても不幸中の幸いは、家から数kmの場所で故障したこと。これが遠く離れた地方の山道で起きていたらどうなっていたのか?バンディットは置き去りに、他のメンバーのバイクで2人乗りか?いや、荷物を積んでいるからそれはできまい。高いカネを払ってレッカー移動!? それよりも、高速道を走行中に外れていたら…。全く悪運が強いというのか何というのか。ご先祖様のご加護があるのに違いない。
 いや、待て、よく考えてみよう。この現象は、別に不幸でも何でもないぞ。要するに、ただの「整備不良」じゃないのか?チェーンの交換をケチったせいで、クラッチのシャフトを折ってしまった。チェーンの交換賃のみならず、さらなる修理代が掛かる訳だ。誰のせい?もちろん、財務大臣「妻」がいけないのだ。なーにが、「夏のボーナス入ったらネー」だ。ふざけるな!ビエーン(泣
 帰宅して無事にバンディットを軽トラから下ろし、父と2人で、詰まったチェーンを外そうと試みた。何しろ、ガッチリと食い込んでおり、近くのネジを外してみたり、ハンマーでチェーンをブッ叩いてみたり、やっとこさチェーンが外れたのだった。チェーンも無事に解放されたことで、元通りスプロケットへと掛けることができた。
 …と、そこまではよかったのだが、この折れたシャフトは修理できるのだろうか?一体おカネはいくら掛かるのか?エンジンの内部から生えているのだとしたら、エンジンをバラすのか?そこまでやるとなると、相当の金額となるのではなかろうか!?
 試しに、ギアをニュートラルにしてからセルスイッチを押すと、一発でエンジン始動。公道は危険そうなので、自宅の庭で運転してみる。エンジンOFFのままギアを1速に入れておき、ちょっと惰性を与えつつセルモーターを回せば、ドコドコと走り出すことが分かった。ただ、止まる時が大変だ。いつもの調子でブレーキをかけるが、エンストする。普通に停車させるのとはずいぶんと様子が違い、突然カクッと止まるので、何度もコケた…。
 それにしても修理しようか、しまいか。修理代もいくら掛かるか分からない…。2009年にキャブレターの整備をして燃費が向上したとはいえ、20km/リットルもいかないバンディット250<リニューアルバージョン2009>。この機会に見切りを付け、違うマシンにするか?中古か新品か?いや、ほどんど乗らなくなったこともあるし、いっそのことレンタルバイクか?前回整備を依頼したモトショップ・ハマに電話して様子を聞いたが、話だけではどこに過大なストレスが印加されたのかも分からないし、現物を見てみないことには何とも言えないとのこと。そりゃそうだ。まずは故障診断に出さないといけなかったが、そもそも修理に消極的だった上に、梅雨時期も重なってタイミングを逸し、バンディット250は、満身創痍のまま、しばしの眠りについたのだった。
 そうこうするうちに、ウメから2010年秋のツーリングの案内が来てしまった。早くバイクを手配しないと間に合わないことになる。バンディット250も不動のまま置いておく訳にはいかない。そこで、財務大臣の許可をとり、モトショップ・ハマに持ち込むことにしたのであった。自走して。
 クラッチは使えないが、エンジン回転数をうまく合わせてやれば、ギアチェンジは可能だ。スタートする時のコツは既につかんでいた。問題は、交差点の一時停止等の停車時だが、これも見事に見切った。停車する前に、ギアをニュートラルに入れてやればよいだけのことだった。
 ところが、ここでまた新たな問題が…。自宅庭での検証の際、発進時は予めエンジンをOFFにしておく必要があった。でも、発進する度にいちいちエンジンを止めるなんてのは非効率だ。それに、交差点のど真ん中でエンストしてコケたら、事故に遭うかもしれない。
 そこで、エンスト覚悟で試してみた。ニュートラルでエンジンON、バイクに跨ったままヨチヨチと地面を足で蹴り、惰性を付け、そのままギアを1速に入れてみた。おお、エンストせずに発進できるじゃないか!? こうして、一時停止も、発進も、シフトアップもシフトダウンも、クラッチの助けを借りることなく(借りたくても借りられないが)乗りこなし、モトショップ・ハマへ無事に到着したのだった。我ながら、さすがは20年間培ったライディングテクニックだ。(故障時の職人技による運転は)もはや熟成の域に達している!
 社長の浜さんは言った。「こういった場合、『去年も整備したからもったいない』って思っちゃうんだよね〜。だけど、このままだと、どんどんとおカネが掛かってしまうよ。バンディットってのは、ちょくちょく(不具合が)出てくるマシンだしね。ここで、思いっ切りの見積もりを出しておくから、それ見てどうするか決めてみたら?バイク、しょっちゅう乗ってるの?…うーん、その頻度なら、レンタルバイクっていう手もあるよね。もちろん修理してもらえばウチとしては助かるけどね!(笑)」
 そう、色々な修理や整備内容を盛り込んで、思い切り高い見積もりを出してもらうことにしたのだった。その値段を見たら、きっとビックリして修理を諦められるだろう。
 どうせ、もはやGW(ゴールデンウィーク)と秋のツーリングくらいしか乗らなくなっているのだ。ハマさんではレンタルバイクもやっている。そして心は、すっかりレンタルバイクへと飛んでしまっていた。250ccだったらホーネットか。スクーターも味わってみたいな〜。いや、どうせレンタルするんだったら、久しく運転していないビッグマシンに乗ってみたいものだ。
 だが悲しいことに、そもそも250ccに乗っていること自体が貧乏であることの証拠だった。となると、レンタルするマシンも例外ではなく、250ccでないとやっていけないであろう。ど〜せケチケチ財務大臣が「お小遣いから出してネ〜。」と要求してくるのは間違いないからだ。月々のお小遣いからのバイクレンタル代の捻出は、非常に厳しい。今回はまだ1泊2日だからレンタル料もさほどではないが、これが恒例のGWのツーリングだったらドえらい金額になる。6泊7日、1日15,000円として計算すると10万円はくだらない。もちろん、新車を買って維持しようとすると、保険代、車検費用、ETC取り付け費、タイヤやオイルといった消耗品等々…、総合すると絶対レンタルした方が安くつくことだろう。
 購入するのであれば中古という手もあるが、前々から目を付けていた、ショップに展示してあったVTR1000は、とっくのとんまに売れてしまっていた。2気筒なら燃費も良さそうでいいな〜、と思っていたのだが…。
 第一、今までの人生で中古のマシンを買って当たりを引いたことがないような気がする。MTX50は買って数ヶ月、交差点の一旦停止のついでにウイイィィン…、とエンジンストップし、そのまま事切れてしまった。先輩から買ったスクーターは1ヶ月で盗まれて竹林に捨てられ不動に。RZ250Rはヤエガス氏により2週間で廃車に。GSX-R400はゼロヨンでFZR400に負けるくせに燃費も負け、やがてぶつけて廃車に。VT250Zは燃費が30km/リットルいくが、スターレットターボにあおられる。CBR400RRは調子が良かったが、FZR400RRの最高速に付いていけず、ウメの先輩に売った。MBX50はホーンが鳴らないし、50ccのくせに燃費も悪くボロかった。ガンマは整備に20万円掛けた翌年壊れた…。
 四輪で言えば、初めて手に入れた1万円のアルトはオイル漏れがしていた。別にもらったアルト4WDは加速がおそろしく鈍く、後続のトラックが蛇行+パッシングしていた。もらったミラは、無事に数年乗ったが、もらったレックスはクラッチが滑っていた。やはり、中古には縁がないのに違いない!
 結論は、新車が安心だ、というところに行き着く。とはいえやっぱり、高い。ビッグマシンなんて100万円以上はする。それ以下で買えるものも当然あるが、求めるスペックだとやはりそれなりに出さないと買えない。ファイヤーブレードクラスなら150万円以上する。妥協しても諸費用込みで120万円程度か…。
 となるとやっぱりレンタル?新車に120万円掛けるならば、GWツーリングだけでも、12万円の代金を払って10年は乗れる計算となる。もちろん、車検やら整備費やらの分は浮く。新車で10年も乗ればすでにボロだ。でも、1回2千km程度の走行距離だから、10回で2万km。うーん、120万円のレンタル料を掛けて2万kmしか乗らないというのも何やらもったいないような…。
 やっぱ新車か。でも、オーバー250ccは、やはり何といっても車検だ。ウメのハヤブサでの実績が、ブレーキパッド交換(約5千円)込みで7万円だったというから6万5千円。10年間に4回通しても26万円。ユーザー車検をやる元気は全くないし…。もちろんその他にタイヤやらオイルやらの交換も必要だ…。
 ならば、レンタルか?いや、新車?こうなったら中古? …い、いかん、無限ループになってきた。
 さて、数日後。思いっ切りの見積もりが出てきた。20万円は軽く越え、下手すると30万円、いや、もっとすると修理不能、くらい出てくるものと覚悟(期待)していた。その通り、見積書は、A4用紙2枚にもわたる超大作。何十にも渡る項目がびっしりと書き込まれている。
 その内容はといえば、折れたクラッチプッシュロッド(と言うらしい)は部品代が意外と安く、たったの630円なのに工賃は8千円!でも、直ることは直るようだ。チェーンと前後スプロケットは言うに及ばず、前後タイヤ、リヤサスペンション(安くできるオーバーホールは不可能で、結局新品交換に。モノクロスだから1本だけでOK。)、フロントフォークオイル、フロントフォークオイルシール、ブレーキオイル、エンジンオイル交換。ドーンと、どうだぁ!? その額なななんと…、15万円超!?「…ん?予想外に安いじゃん。拍子抜けだ。来年のGWにバイクレンタルしても軽く10万は超えるよなぁ。んじゃ、直しちゃおーっと。」あっさり結論が出て、修理実行ボタンをクリック!
 それにしても、歳を取ると共に面倒臭がりになってきたようだ。エンジンオイルは自分で交換してできないこともないし(オイルの量が少な過ぎる、と指摘された失敗もあったけど)、ブレーキフルードだって少し黒ずんでいるものの、今交換しなくてもよいだろう。フロントフォークのオイルだって、まだ交換しなくたっていいだろう。タイヤだって、インターネットで買って持ち込めば、少しは安く上がることだろう。そうすれば、もっとトータル金額は安くなったのではないか、とは思う。だがしかーし!とにかく面倒だ。全てお任せしてしまったのであった、「お願いします!」
 そして待つこと数週間。ついに、バンディット250<リニューアルバージョン2010>の起動試験の日がやってきた。
 ちょっと前に入ったらしい店員さんから、新品タイヤは皮がむけるまで滑りやすいことの注意を受けた。だが、新品タイヤの慣らしなんてものは世間の常識だろう。昔モトショップ・ハマが別の場所にあった時、同様のことを注意された直後、ショップから出る際にアクセルを開け過ぎて見事コケたお客さんが約1名いたので、その話題を出してみた。しかし、新人店員さんは、その事実を知らなかった。(恥ずかしい過去を知る人間が減ってよかったな、ヒデ。名前は伏せておいてあげたぞ。)
 更に、チェーンにも慣らし運転が必要とのことだった。チェーンに慣らし運転がいるとは初耳だった。よって、ショップから家まで乗って帰った訳だが、タイヤもチェーンも慣らしをしないといけない、ということを意識しておとなしく走ったので、色々と部品が交換されてはいるものの、その恩恵がどれくらいのものか、全てを感じとることはできなかった。でも、さすがにチェーンは静かになった!それに、新品のタイヤ。車体を少し傾けると、傾けたままの角度を維持するようなハンドリングの粘っこい感じ。古いタイヤだとこうはいかない。新品タイヤの、この寝たら寝たままの感じ…、これこれこれだよ。う〜ん、久しぶりに味わう感触。いいぜ、この感覚は!
 年々バイクに乗る頻度が減り、この時も修理後は1回も乗らず、そのまま車庫に放置されたバンディット。いよいよ秋のツーリングにて再始動。いつもだったら、ツーリング前日に会社から帰って、晩秋の暗闇の中、最悪は出発の朝に少しだけ早く起きて、エンジンを始動させてみたり、チェーンを張ってみたり、空気を詰めてみたり、油を差してみたり…と慌ただしいのだが、今回は全くその心配はなし。気持ちの余裕からか、何と、出発の前日ではなく、1週間前の休日にエンジンが動くことを確認したのみだった。
 情報によると、あのヨージのマシン(ドラッグスター)が、生意気にも高速領域を快適に走れるようにチューン(風防を装着)したらしい。こちらとしてもやれるところは全部チューンしたバンディット250<リニューアルバージョン2010>。勝負は望むところだ。
 迎えた「グレートツーリング外伝 '10 in 静岡」。豊科ICから長野自動車道に乗り、集合場所のみどり湖PA(パーキングエリア)に向かう。少なくとも集合場所までは、チェーンの慣らし運転の為に速度を抑え気味にし、80km/h程度で走行しなくてはならない(と勝手に決めていた)。みどり湖PAからは、他の(ビッグマシンを駆る)メンバーに、80km/h巡航をお願いする訳にもいかないし、かといって自分だけゆっくり走ると、地図が頭に入っていないので、目的地にたどり着くことなんてできっこない。
 ところが!ランプウェイから本線に合流して間もなく、グオオーン!と野太い音をさせた黒い単車がスッと目の前に割り込んできた。スズキのくせに、なぜかSTIのステッカーが貼ってある、ウメのハヤブサだ。彼は「付いて来い!」と挑発している。挑発されたら、例え(性能差で)相手にならずとも、受けて立つしかないじゃ〜ないか。これで、いきなり80km/h走行は不可能になった。ちょいと早いけど、チェーンもタイヤも慣らし終了ってことで…。
 去年整備したキャブレター周りのおかげで、エンジンの吹け上がりは全く快調。最もうれしかったのは、チェーンがガシャガシャワッシャワッシャと言わないこと。加速すると何やら奥の方で、キュイィィーン!というメカ音がする。これは気持ちいい。何だろうか、チェーンの音が静かになったおかけで、この音が聞き取れるようになったのか、それとも、新品チェーン自体が発する音なのだろうか?よく分からないが、このサウンドはご機嫌だ。バンディット250。こいつの本来の姿は、こうだったのに違いない!
 秋のツーリングは、ヨージとの熱いバトル(ほとんど一緒に走っていないが)も加え、何の心配もなく乗り切った。強いて言うなら、各部が滑らかになったはずなので燃費も向上するかに思えたが、こちらはさほどのこともなく15km/リットル程度だった。やはりビッグマシンに付いていこうとすると、燃費の悪化は避けられないのだろう。
 通算すると、何らかの新車が買えるほどに整備料が掛かっているバンディット250。しかし、これでマシンのほとんどの部分に手が入った。あとはエンジンさえ壊れなければ、当分は修理の必要もないことだろう。これでまたしばらく乗り続けなくてはならなくなっちまった。果たして良いのやら悪いのやら、やれやれ…。

 おしまい。


back.gif main.gif