2012年のツーリング

グレートツーリング '12 in 佐渡

メンバー(マシン) ウメ(GSX1300R)、オユタ(バンディット250)、カンちゃん(YZF1000R)、ヒデ(CBR900RR)、ヒロ(GPZ900R)、ヨージ(XV1600A)、カッキー(Z1000)
 GTECメンバーの野郎共は全員サラリーマンだ。ゴールデンウィークにロングツーリングを実行する為には、平日に有休を取得して連休を繋げる必要がある。しかしこのご時勢、どの会社も経費節減で残業が制限されている中、だからといって仕事量が減っている訳ではなく、通常勤務時間内でいかに効率良く業務を進めるか努力しても限界がある。その結果、気軽に休んでいられなくなる(有休が取り難くなる)のだ。
 という訳で、スケジュール調整の結果、今年は祝日のみを使って佐渡島1周ツーリングへ行くことになった。
 今回はヨージが外伝(1泊)ではない2泊以上のグレートツーリングに初参加し、そのヨージの(会社の)先輩であるカッキーもスペシャルゲストとして同行する。
5月3日(木) 天気:雨のち曇り
 集合時間の7時30分、長野自動車道筑北PAでウメ、オユタ、カンちゃん、ヒデは雨宿りをしていた。天気は雨。大気の状態が不安定で、今日1日は全国的に荒れ模様らしい。それどころか、この状況はこれから4日間続く予報となっており、皆既に気が滅入っていた。
 12分遅れてヒロ参上。ちょうど小雨になったので記念撮影をしてから、新潟港目指して出発した。隊列はウメ、ヒデ、ヒロ、カンちゃん、オユタの順。

集合!
 長野自動車道→上信越自動車道を北上し、妙高SAで休憩。ここは標高が高く、路肩には雪が残っていて、涼しいを通り越して寒いくらいだ。
 妙高SAを出発する際、ウメがハヤブサのHIDを点灯した瞬間、メーターパネル内の時計がリセットされた。これは例の現象(エピソード「HID化の代償」を参照)によるものと思われた。何度も経験しているが、エンジンさえ掛かっていれば今まで走行には支障がなかった為、今回も構わず発進した。ところが、本線に入ってから異変に気付いた。なんと、スピードメーターとタコメーターが全く動いていない!デジタル式のトリップメーターも加算されずに同じ距離を表示したまま。発進時にタコメーターなんていちいち見ないし、スピードメーターだって本線に入ってから初めて活用する為、発見が遅れたのである。メーター類以外に異常はなかったものの、まさかスピードが何キロ出ているかも分からずに先頭を走り続ける訳にもいかず、彼は次のパーキングエリア(新井PA)に入った。後続も何が起きたのかと後に続く。幸い、屋根付きの2輪用パーキングが空いていた。
 さっそくハヤブサのキーをオフに。しかし、エンジンは停止したものの、液晶表示類が消えない。キーを抜いても変化なし!ライトオフの状態でキーを入れて再度エンジンを掛けたが、やはりタコメーターは作動せず、キーオフの状態でも電源が切れない。完全に電気系統が誤動作している。まずい、このままではバッテリーがあがってしまう!
 最後の手段とばかりに、リヤシートの荷物を外し、シート下の工具を取り出してバッテリーのリセットを行ったところ、何とか電気系統は復帰した。この間10分程のタイムロス。フェリーの出航時間が決まっているので、「(ウメ)みんな、申し訳ない!詳しい話は後だ。」と、出発。

緊急修理!
 結果的に、今回のツーリングで同じ症状は出なかったものの(HIDを点灯した瞬間にエンストしたり、時計がリセットされたりする症状は何度か発生したが…)、もはや放置しておくのが危険な状態なのは確かだ。新車で購入してはや12年目。これをきっかけにバイク買い換えか!? それともHIDを諦めてノーマルのハロゲンランプに戻すか?ちなみに妙高SAと新井PA間の走行距離は、内部的にちゃんと加算されていたようである。
 上越JCT(ジャンクション)から北陸自動車道に入り、新潟市に向かう。新潟県は長野県の隣県であり、妙高SAの時点で新潟県入りしていたというのに、新潟市となると東京へ行くのと同じ位遠い…。
 長岡JCTで関越自動車道と合流すると、一気に交通量が増え、やがて渋滞が発生した。雨の中、慎重に車線間をすり抜けし、10時35分、予定よりも5分遅れて栄PA着。
 ここで東京から関越自動車道を北上してきたヨージ、カッキーと合流した。ヨージは昨年の「グレートツーリング外伝 '11 in ゲロ」以降に大型自動二輪免許を取得し、ドラッグスター400からXV1600Aへと、何と排気量が1200ccもアップしていた。
 「(カッキー)みなさん、これから4日間、何かとご迷惑をお掛けすることもあるかと思いますが、宜しくお願いします!」「(ヨージ)ああん?迷惑掛けるやとぉ?カッキーよぉ…。GTECなめたらあかんでぇ。昇進したからっていい気になってるんとちゃうかぁ?」「(カッキー)あ、は、はい、すいません…って、ええ〜!?一応会社じゃこっちが先輩だし、上司でもあるんですけど…、しかもなんで関西弁!?」「(ヨージ)ここは会社じゃないんや。バイクじゃ自分が先輩だしぃ〜、排気量なんて1600cc、つまりZ1000の1.6倍も速くてえらいってことよぉ。分かるぅ?1.6ば〜い!」「(カッキー)ぜ、全然分からない…。つ〜か、何かキャラ変わってない?」「(オユタ)ヨージって、いつもこうじゃん。」「(ヨージ)お、えへへ…、バンディットって250ccっスよね?えっと〜、1600を250で割ると…。ありゃ、何かすごくないっスか!?」「(オユタ)やめい!バイクの排気量の違いが速さの決定的差ではないということを…教えてやるわ!」

ヨージ…なのか!?
 ちなみにヨージは東京都江戸川区、カッキーは埼玉県さいたま市からの参加で、自宅を出発して集合場所に着いた時間は次の通りである。渋滞を考慮してゆとりを持って到着したのはえらい!
  ・ヨージ:3時30分出発→10時15分着
  ・カッキー:4時30分出発→9時30分着
 10時50分、栄PAを出発。ここからの隊列は基本的にウメ、ヒデ、ヒロ、オユタ、カッキー、カンちゃん、ヨージの順である。
 新潟中央JCTで日本海東北自動車道に入り、新潟亀田ICで高速道路を降りると、R49(亀田バイパス)、R7(栗ノ木バイパス)を北上。
 途中、フェリーターミナルまであと僅かというガソリンスタンドで給油した後、わらわらとスタンドを出る時に、ヨージとカッキーが最後尾となった。その直後の信号で一行が横断中、赤に変わってしまい、隊列分断が発生。ヨージとカッキーが取り残された。こういった場合、大抵先頭集団は少し先で待っているのだが、多車線で交通量の多い道路の為にそうもいかず、目的地で待つことにした。フェリーターミナルへの案内は至る所に出ていたし、何より後続の2名はカーナビを装備しているので問題はなかろう。しかし、その2名がなかなか来ない…。実は交差点間の距離が短いこのエリアで、いきなり曲がるポイントを間違えて、えらく遠回りをする羽目になってしまっていたのだった。
 結局、全員が新潟港フェリーターミナルに揃ったのは12時。計画では栄PAに集合してから速やかに出発すれば、給油時間を入れても11時半にはフェリーターミナルへ到着すると思っていた。そもそも、栄PAに10時30分集合というのも、長野県組は何度か同じルートを経験しているから余裕の筈だった。しかし、とにかく雨は全てのアクションを遅くする。例えばカッパ装備でおしっこをするのも一苦労なのだ。ヒロの遅刻とウメのアクシデントもあって栄PAでの集合時間に5分遅れた上に、トイレだの集合記念撮影だのとやっていたら、出発が10時50分になってしまい、加えて給油がセルフスタンドだったので手間取ったこと、ヨージ&カッキーが道を間違えたことでタイムロスが積み重なってしまった。
 佐渡行きのフェリーは12時35分に出航予定である。予約を入れてあるとはいえ、少し冷や冷やしたのであった。せっかくヨージとカッキーが早目に到着していたのに、それを活かすことができなかったのは残念である。(結果的には何の問題もなく乗船手続きを行うことができたが…。)
 定刻を10分程過ぎてフェリーは新潟港を出航した。佐渡島(佐渡市)の両津港まで2時間半の船旅だ。料金は、2等+2輪が7,680円(750cc以上)と6,370円(750cc未満)。
 波は穏やかで、想像していたよりも揺れなかった。すると、途中で雨は止み、太陽が顔を出したではないか。天気予報では佐渡島も終日雨ということだったので、全く期待していなかったのだが、これはもしかしたら、ドライの道を走ることができるかもしれない…。
 15時15分、佐渡島上陸!期待通り雨は降っておらず、それどころか約60km離れている本日の宿「佐渡温泉 おぎの湯」がある小木の方向に雨の気配はなかった。カッパを脱いで出発。

佐渡島上陸!
 小木まではひたすら県道45号線を海沿いに進む予定だ。まずは13km程走って姫崎灯台へ。
 姫崎灯台は日本の現役鉄造灯台としては最古で、「日本の灯台50選」「世界灯台100選」にも選ばれており、初点灯が1895年(明治28年)という白亜で六角形の中型灯台なのだ。なるほど、小ぶりではあるが、威厳と歴史を感じさせるものがある。

姫崎灯台
 後は宿まで一気に走った。部分的に道が細くなるものの、ほとんどは交通量が少ない快適路で、新潟港までのストレスを発散することができたのだった。17時、宿着。
 温泉にゆったり浸った後は、今日から毎晩催される宴の始まりだ!

「(ヨージ)今日のところは軽く飲むっス。」
 本日の走行距離:長野自動車道豊科ICから327km/長野自動車道塩尻北ICから343km/440km(ヨージ)/379km(カッキー)
宿データ 宿名 佐渡温泉 おぎの湯
場所 新潟県佐渡市小木町1494-6
感想 アルカリ性単純温泉の大浴場がウリ。施設は新しく、部屋もきれい。スタッフも優秀で、食事もおいしい。全く不満のない宿だった。
1泊2食付き:7,000円(税込み)
5月4日(金) 天気:雨
 朝から雨である。天気予報によると、1日中降り続くとのことだ。計画では時計回りに海岸線沿いを両津まで走ってから、内陸の金井にある宿「民宿 桃華園」に泊まる予定となっていた。佐渡の海岸美を満喫しようという日なのに、この天気では…。
 泣き言を言っても始まらない。意を決して8時55分に雨用の装備で出発した。
 肌寒い中、まずは宿から3km程走って宿根木(しゅくねぎ)を見学。宿根木は、江戸時代に回船業で栄えた集落で、入り江の狭い土地に古い家屋が密集している。雨がザーザー降っているので、カッパを着て、ヘルメットも被ったまま石畳の小道を練り歩いた。伝統的建造物が多く、なかなか趣のある町並みなのだが、こんな状況ではゆっくり見る気分にはなれなかった。

宿根木(三角家)
 引き続き海沿いを進む。沢崎鼻灯台から先は、いきなり路面状態が悪くなった。トンネルの中は、波が進入した跡だろうか、路肩の排水溝のコンクリートパネルがことごとくめくれ上がっており、一部は路面にも転がっていて怖かった。また、アスファルト上に砂が厚く堆積している箇所が所々にあり、うかつに乗り上げたら転倒の恐れがあった。走っているクルマは皆無に近い。
 素浜海岸を走行中、前方に…飛行機が不時着している!? 実はこれ、1946年(昭和21年)にイギリス軍の輸送機「ダコタ」(ダグラスDC-3)が佐渡島に不時着し、地元住民が搭乗者を温かく迎え入れて機体の修復に協力、滑走路を作って再び飛び立たせることに成功したという実話を映画化するプロジェクトのセットなのであった。近くで見ても本物っぽく、なかなかよくできていた。映画の公開は来年秋とのことだ。予算等の問題もあるのだろうが、えらく気の長い話である。

ダコタ
 その後、R350に出ると、そこそこの交通量のオーソドックスな国道となった。やがて左側にモアイ像が!? モアイ像の横顔そっくりなこの人面岩の前で小休止。

人面岩
 更にR350を進み、河原田本町で県道45号線に入る。後はひたすら両津までこの県道45号線を海沿いに走る予定だ。
 七浦海岸の夫婦岩がよく見えるドライブインに10時55分着。この辺りは隆起海岸で、変化に富んだ地形が多い。小雨だったので、三脚を使っての記念撮影を行うことができた。しかしその直後、再び本降りに…。大休止の後に出発。

夫婦岩
 お次は平根崎海岸の波蝕甌穴郡(はしょくおうけつぐん)だ。波浪によって生じる岩盤浸蝕現象で、巨大な板状の岩に、直径数センチから数メートルに及ぶ円形のくぼみ(=甌穴)が形成されている。ところが、道路から見える訳ではなく、廃墟と化したドライブインの横が駐車場となっていて、控え目な看板を見逃したら通り過ぎてしまう。それはともかく、岩場に直接下りることができ、想像以上のスケールに圧倒された。晴れていれば素晴らしい眺めであろう、ダイナミックで隠れた名所といった感じだった。(他に観光客はゼロだった…。)

波蝕甌穴郡にてシェーをする男
 さて、既に12時を過ぎている。そろそろ昼食を…、と思っても、付近に食事のできそうな店は見当たらない。波蝕甌穴郡から約11km北上して、ようやく「旅荘 食事処 みなと」を発見。焼き魚や刺身定食を食した。おいしかったが、ちょっとボリュームがあり過ぎですぜ。(手頃なメニューがなかった。)
 たっぷり休憩し、13時45分に店を出発。やがて県道は、入り組んだ海岸線に沿ったワインディングとなった。しかし、道幅が狭い上にウェットな路面なので、気持ちよく走ることなどできやしない。
 目の前に現れた、一見ありふれた橋を渡ったところで、一行は路肩にバイクを縦列駐車した。この橋は海府大橋(かいふおおはし)といい、実は橋の真ん中から下を見ると、足がすくんでしまう程の高さなのだ。(新潟県で最も高い橋らしい。) なるほどよこくぞこんな地形に橋を造ったものだと感心する。雨なので怖さ倍増だ。しかし、展望台だと思えば、抜群の眺めではある。

海府大橋(補修工事中)
 ところが、1人だけ橋の真ん中へ行こうとしない男が…。「(ウメ)あれ?お〜い、ヨージ。なんでこっち来ないの?」「(ヨージ)くだらないっス。ただの橋っス。」「(ヒロ)そんなこと言わないで、すごい眺めだって。」「(ヨージ)興味ないっス。」「(カンちゃん)これって、ひょっとして…。」「(ヒデ)ささ、にいさん、覚悟決めて行こうか。」「(ヨージ)ひぃ〜っ!ひ、引っ張らないで〜っス!」ヨージが高所恐怖症だと分かった瞬間だった。
 海府大橋から8km程走り、14時半に大野亀(おおのがめ)付近の駐車場着。
 日本三大巨岩のひとつ大野亀は、標高167メートルの一枚岩で、頂上からは外海府を一望できる…筈だったのだが、上部は霧の中。これでは登っても何も見えないであろうし、そもそも雨の中、カッパを着てヘルメットも被ったままでは、そんな気はさらさらなかった。

大野亀
 ただし、近くにある二ツ亀(ふたつがめ)はかろうじて見えた。2匹の亀がうずくまっているような形の島なのだ。

二ツ亀(右奥)
 大野亀を後にし、2kmちょっと走って二ツ亀が間近に見えるポイントにも寄った。この辺の海水の透明度は佐渡随一を誇るらしい。しかし、大野亀からは全体が見えていたのに、この時は上部が霧に覆われていた。風も強くて、早々に退散。
 次は約5km先の弾埼(はじきさき)灯台。佐渡最北端の灯台で、1919年(大正8年)に建てられた。江戸時代には砲台があったという。見た目はごくオーソドックスな灯台であった。
 時刻は15時20分。今日の観光メニューは全て消化したので、後は佐渡のほぼ中央に位置する本日の宿「民宿 桃華園」に向かうだけだ。
 県道45号線を両津まで南下し、R350で南西方面へ走る。途中で1回給油した後、16時30分に桃華園着。
 結局今日は1日中雨だった。
 本日の走行距離:163km
宿データ 宿名 民宿 桃華園
場所 新潟県佐渡市金井新保乙1636-1
感想 アットホームな民宿。設備に不満はなし。スタッフ一同で何かと親身に接してくれ、屋根付駐車場にもバイクを停めてもらって助かった。食事はボリューム満点。
1泊2食付き:8,400円(税込み)
5月5日(土) 天気:曇りのち雨
 朝7時の時点で路面はウェットなものの、雨は降っていない。それどころか、空は雲が薄くなりつつある。朝食を済ませて様子を見ていると、道はドライに変わり、青空も見えてきた。よし、出発だ。桃華園には今日も連泊するので、軽装でOK。とはいえ、いつ雨が降るかも知れない為、カッパは持参する。
 9時10分に宿を出ると、最初の目的地、加茂湖の南西にある「トキの森公園」へ。宿からは10kmちょっとの距離なので、10分位で着いた。

トキの森公園
 日本固有のトキは、乱獲や環境汚染によって2003年に絶滅し、現在は中国から譲り受けたトキ(遺伝子は99.935%一緒)を公園に隣接する「佐渡トキ保護センター」で増殖させている。
 「トキ資料展示館」では、トキの歴史や生態等の様々な情報を分かり易く展示しており、観察通路から、飼育中の本物のトキを観察することができる。ケージまでは想像していたよりも距離が近く、備え付けの双眼鏡を使わなくても、じっくり観察することができた。独特の泣き声もよく聞こえた。

飼育中のトキ
 現在佐渡島では、放鳥されたトキのつがいにヒナが生まれ、順調に育っているという。もちろんその場所は秘密なのだが、元気に巣立ってくれることを祈らずにはいられない。
 外に出たら青空だった。さて、いよいよ次は今回のツーリングにおける最大のイベントである、佐渡金山の見学だ。何しろ、規模が大きいので、じっくり見ると時間が掛かる。金山は大佐渡スカイラインのほぼ始点に位置している。大佐渡スカイラインは金山の辺りから、佐渡最高峰の妙見山頂上付近までの、全長15km位のコースである。そして妙見山までは、宿がある金井地区からも上っていくことができ、大佐渡スカイラインと繋がっている。(このエリアも大佐渡スカイラインに含めるとするのが一般的なようだが、後ほど記載するように、あまりにも路面状況が違うことから、少し無理がある。)
 オユタ、カンちゃん、ヒロは走ったことがあるのだが、よく覚えていない…とのこと。きっと長野県のビーナスラインのような快適路に違いない!と期待しつつ、一旦宿に戻った。
 何人かがトキの森公園でかさばるお土産を購入していたので、桃華園で降ろし、少し休憩した後、11時20分頃に出発。
 妙見山まではずっと上りのワインディングが続く筈。道はドライだし、昨日のうっぷんを晴らさせてもらうぜ!と各自気合を入れてアクセルを開けた。ところが、路面はやがて網目模様の入ったコンクリートになった。急斜面で、冬季は雪が積もる為、スリップ防止なのだろうが、これがどうにもバイクにとっては走り難い。ハンドルガタガタ!コーナリングも慎重にならざるを得ない。
 妙見山頂上に近い白雲台交流センターで休憩するべくバイクを停める際、ふとした油断からカンちゃんがUターン時に転倒!本人に怪我はなかったものの、シフトチェンジペダルの突起部がポッキリ折れてしまった(エピソード「シフトチェンジできない!」を参照)。スマートフォンで検索するも、近くにバイク屋はなさそうだ。宿に電話を入れたら、知り合いの自動車販売店に当たってみるからとりあえず戻ってきたら?ということだったので、ご好意に甘えてカンちゃんだけ来た道を引き返した。宿までの約8kmはひたすら下りだから、彼はちゃんとたどり着けるだろう。損傷の状況から、応急修理なら何とかなりそうだし〜、今日も泊まりは同じ宿だし〜…と、他のメンバーは、このまま当初の予定通りに進むことにした。
 そんなアクシデントもあったが、白雲台からの眺めは素晴らしかった。真野湾から両津湾まで、佐渡の“くびれ”を見渡すことができ、美しい田園風景が広がっている。

白雲台からの眺め
 白雲台から先は、幸いなことに路面がアスファルトだった。ただし、雪融け水の為に所々ウェットとなっており、加えてきついヘアピンカーブが連続する下り坂…。ガンガン飛ばすことはできなかったが、なかなか面白かった。12時15分に佐渡金山の第一駐車場着。「(ヨージ)おかしいっス。バンディット250の6.4倍速い計算なのに、付いていけないっス。」「(オユタ)どういう計算なんだよ…。」帰りは今来た道を逆に走る予定だ。楽しみである。
 金山では、まずチケットカウンターで坑道跡等の自由見学コース(1,200円)と、産業遺産散策コース(1,000円)のチケットを購入。産業遺産散策コースは説明員が案内するツアーとなっており、14時に出発するとのことだ。
 チケットを購入したところで、お次は昼食。飲食できる店が周りになく、バイクで少し下った所の第3駐車場にある「金山茶屋」で食べた。この辺りを見渡せば、産業遺産だらけだ。これらは後程のツアーで回ることになるであろう。
 昼食後、バイクで第一駐車場まで戻り、ツアーの集合時間まで宗太夫坑(そうだゆうこう)を見学することにした。

佐渡金山坑道入口
 佐渡金山は1601年(慶長6年)に発見され、1989年(平成元年)までの388年間に渡って採掘が続けられた。採掘された金は78トン、銀2,300トンの鉱山だった。坑道の総延長は約400キロ!この金山は数百年前から現代に至るまでの採掘の痕跡が至る所に見られるのだ。宗太夫坑は主に江戸時代の金採掘の様子を、実際の坑道跡を利用した資料館として紹介している。
 薄暗い坑道内を進むと、何やら音が響いてきた。「カポ〜ン、カポロ〜ン…※」その音の正体は、採掘の様子を再現した、暗闇の中で怪しげに蠢く人形群だった。マネキン人形の接合部にモーターを組み込んで無理矢理動かしているといった感じで、動作が不自然極まりない。駆動部からはオイルが滲み出し、まるで血のようだ。中には、まれに首が360度グルッと回転するというサプライズな人形もいて、さながら地獄めぐりツアーか?と思わせる。(※水上輪=手回しポンプを廻す音)

宗太夫坑の人形群
 オユタとヒロは「グレートツーリング '92 in 佐渡」(カンちゃんも参加)でここに来ており、どうやら基本的にはその当時のままリニューアルしていないようだ。少なくとも20年間こき使われ続けた人形達は、さすがに疲れの色(劣化)が否めない。「いいね〜、イカスねぇ〜。」と、一同じっくり観察してしまった。そう、実はこの人形を楽しみにしていたのだった。20年前にはうろ覚えだった人形達のセリフは、現在のテクノロジー(デジカメによる動画撮影)によって記録された。やはり一番印象に残るのは「早く外に出て、酒を飲みてぇ…。馴染みの女にも会いてぇなぁ〜…。」であろう。このセリフが背中にプリントされたTシャツが売店に売っており、この後オユタが購入していた。
 そうこうしているうちに産業遺産散策コースの集合時間になったので、集合場所へ。ところが、参加者は予想に反してGTEC達だけだった…。定員が50名までと決まっている為、ゴールデンウィーク真っ只中、すぐに満員御礼になってしまうに違いないと思って、到着後すぐチケットを購入したのに、こんなので商売になるのだろうか?と心配になってしまう。
 マイクロバスに乗り、ガイドの案内で14時にいざ出発。このガイドさんが、実にウメとオユタ好みの熟女で、2人にとってしばし至福の時間を味わったのだった。
 明治時代に大規模な近代化が行われた佐渡金山の周辺には、今でも産業遺産がたくさん残っている。その中から歴史的価値の高い遺産をいくつか回るのだ。ここでいちいち紹介はしないが、例えば巨大な鉄製やぐらが残る、西洋式垂直坑道の大立竪坑(おおたてたてこう)は、一般の観光客が入れない、岩をくりぬいた機械室内の巨大な巻揚機やモーター等も見ることができる。また、海に近い北沢浮遊選鉱場(きたざわふゆうせんこうば)・精錬所跡といった場所には、徒歩ではとても行けない。内容的にはボリュームが大きく、しかもGTECだけだった為、質疑応答も含めてじっくり見学することができた。これで1人千円は安いと言えよう。

北沢浮遊選鉱場・精錬所跡
 本来はカンちゃんもこのツアーに参加する筈だったが、例のアクシデントで離脱。その後、応急修理でバイクが復活し、河原田本町経由で金山に到着したとの連絡がツアー中にあった。…が、まだまだツアーは時間が掛かりそうだったので、待たせるのも悪いと、自由見学コースを好きに見てもらい、宿で落ち合うことにした。
 時刻は15時40分。引き続き自由見学コースの残り、道遊坑(どうゆうこう)コースに入った。こちらは平成元年の操業停止まで使われていた近代的な主要運搬坑道で、トロッコ電車のレール跡等が見られた。旧機械工場の内部には、坑内で使っていた機械類も良好な保存状態で展示してある。

鉱山の男達!?
 山の中央がV字型に立ち割れた佐渡金山のシンボル、道遊の割戸(どうゆうのわれと)もこのコースで見ることができるが、間近に見える展望台までは少しばかり山道を歩かねばならない。実は先程のツアーにおいてマイクロバスで展望台まで行ってくれたのであった。よって、省略。(産業遺産散策コースと重複する部分は予め聞いていたので、仮に道遊坑コースを先に見学した後で「道遊の割戸はさっき見ちゃったんだけど〜。」とはならない。)

道遊の割戸(産業遺産散策コースにて)
 そして資料館を見て、売店でお土産も物色して、さすがに疲れた一行は、後は大佐渡スカイラインを走って帰るだけと、16時40分に施設の外へ出た。瞬間、顔が青褪めた。雨が降っている…。しかも激しく!屋根の下で途方に暮れていたら、何と雨は白い粒に変わった。あられ(直径5mm未満の氷の粒)である。空はどんよりしていて、まるで夏の夕立のようだ。しばらく待っていたら、あられは雨に変わったものの、止む気配がない。これではスカイラインを攻めるどころではない。カッパを着て河原田本町経由で帰るべく、17時に出発。この道をカンちゃんは往復した訳だが、早目に宿へ帰った彼は、幸い雨に遭わなかった。

また雨だよ…
 県道31号線まで出ると、雨は降っていなかった(降った形跡すらなし)。R350沿いのコンビニで夜の宴会用に酒を大量購入してから桃華園へ向かうと、宿の手前でまた降り出した…。雨雲はまるで、大佐渡スカイライン周辺の上空にだけ貼り付いているかのようだ。
 こうして今日もほとんどのメンバーはカッパを着たのであった。それでも、スカイラインの片道だけでも走れたのでよしとして、カンちゃんは応急修理によって何とか自走で家まで帰れそうだし、最後の夜の宴会は最高潮に達した。

「(ヨージ)全然足りないっス!」
 本日の走行距離:64km/カンちゃん:93km
宿データ 宿名 民宿 桃華園
場所 新潟県佐渡市金井新保乙1636-1
感想 5月4日のデータを参照のこと。
5月6日(日) 天気:雨のち晴れ
 朝は地響きを伴なう程の大きな雷の音で目が覚めた。そして激しい雨…。今日1日は荒れ模様だそうだ。うんざりしながらカッパを着て、8時30分に出発。往路で入港した両津港を目指す。
 フェリーの出航時間は9時15分。港まで約12kmとはいえ、信号の多い街中を走ることになるので、あまり時間的余裕はないのでは?と思われるかもしれないが、チケットは初日に買ってあるので大丈夫。8時50分にフェリーターミナル着。後は並んで乗船を待つのみ。
 そして予定通りフェリーは両津港を出航した。さらば佐渡島!なお、往路に比べて積載車両や乗客は少なかった。
 新潟港までは雷雲の中を航行したようで、すぐ近くに雷が落ちたりして怖かった。
 11時45分に新潟上陸。この雨では記念撮影など無理。初日にも寄ったガソリンスタンドで給油して、R7、R49を北上。新潟亀田IC近くの「アークプラザ新潟」内で昼食。ここで自宅までのエネルギーをチャージした。
 13時30分に出発して、新潟亀田ICから日本海東北自動車道に入る。後は初日と逆コースで帰るだけだが、雨と風が激しく、おまけに寒い!こんな状態が家まで続いたらどうしようと悲観的になってしまう。
 栄PAで休憩し、長野組本隊はヨージ、カッキーとお互いの無事を祈りつつお別れ。

お疲れ!
 柏崎市まで来ると雨は止み、やがて青空が見えてきた。上信越自動車道の妙高SAで休憩後に解散。後は自分のペースで帰った。
 この日は栃木県や茨城県で観測史上最大級の竜巻が発生して大きな被害を出したというし、これほどおかしな天気の続いたツーリングは初めてであった。また、メンバー全員揃っている状態において、高速道路以外ですり抜けは一切しなかったというのも、GTECツーリング史上初めてかもしれない。それだけ佐渡島の道路はすいていたということか。
 本日の走行距離:長野自動車道豊科ICまで294km/長野自動車道塩尻北ICまで310km/346km(ヨージ)/323km(カッキー)
レポート by ウメ


グレートツーリング外伝 '12 in 群馬
メンバー(マシン) ウメ(K1300S)、ヒロ(GPZ900R)、ヨージ(CBR250R)、カッキー(Z1000)
 6月にウメがバイクをBMW K1300Sに買い換え、慣らし運転を兼ねた外伝ツーリングが催された。ワインディングを豊富に盛り込んだ攻めのコースで、疲れを群馬県みなかみ町にある宿の貸切露天風呂に浸かって癒すというものだ。東京方面からはヨージとカッキーも参加する。彼らとは14時に群馬県沼田市の道の駅「白沢」で合流予定である。
7月21日(土) 天気:曇り時々雨
 1週間程前に梅雨明けし、そのとたん猛烈な暑さに日本中が見舞われた。群馬県館林市は最高気温約40℃を記録。こんな中を大型バイクで走ったら、血液が沸騰してしまうかもしれない…。とにかく、夏真っ盛り。暑いのは覚悟していた。ところがその心配は拍子抜けするくらい杞憂に終わるのである。
 7時30分、松本市刈谷原町にあるセブンイレブンにウメとヒロが集合。明け方まで降っていた雨の為、道はハーフウェット。雲は低く、今にも降りだしそうだ。そんな天気ではあるが、マコちゃんがBMW R1100RSで見送りに来てくれた。同じBMWユーザーとなったウメとマコちゃんのバイクは初顔合わせ。しばし談笑していると、雨がパラパラと…。仕方なくカッパを装着し、マコちゃんの見送りを受けて7時50分に出発。

集合1
 まずは青木峠越え。道幅は狭いが、交通量がほとんどない為、意外と攻め甲斐のあるワインディングなのである。しかしそれは路面がドライだったら…の話。雨は出発後すぐに止んだものの、峠区間はほとんどがウェット。ウメのバイクには外気温計が標準装備されており、宿に着くまで終始15〜19℃の間を指していた。暑いのを前提の装備でいた為、走っていると涼しいを通り越して寒いくらいだ。まるで3ヶ月程季節が逆戻りしたかのようで、これは予想外だった。(暑いよりはいいか…。)
 峠を抜けると路面はドライになったが、上田市に入ると交通量が増え、しばらくは淡々と走った。
 R144で上信越自動車道の下をくぐり、ローソンにて休憩。空はいつ降ってもおかしくない状況だったので、カッパは脱げなかった。
 9時20分頃に出発。やがて遅いトラックの後ろに追い付いた。しばらく我慢して走っていると、R406と分岐する信号が赤。ここは「グレートツーリング外伝 '05 in 草津」の初日にオユタが瀕死のRGV250γで怖い思いをした、まさにその場所だ。などと思いつつ、2台はすり抜けで前に出ることに成功。オールクリアーとなったこの先の鳥居峠を思う存分攻める…つもりが、これまたハーフウェットな路面で中途半端な走りとなった。
 峠を越えると、国道沿いの畑が高原野菜の収穫真っ盛りで、出荷用トラックのタイヤに付着した土によって、路面は泥だらけ。みごとに汚れた車体を洗い流そうという配慮か、今度は本格的な雨のシャワーが降り始めた。
 2011年に全線開通したばかりの八ッ場(やんば)バイパスを走り切った辺りのセブンイレブンで休憩し、今後のルートを検討する。
 時刻は10時45分。実はこのエリアに着いた時点で雨が降っておらず、なおかつ時間的余裕があったら、やはり「グレートツーリング外伝 '05 in 草津」で走ったことのある県道28号線で榛名山のワインディングを堪能し、渋川市へ下りて渋川伊香保ICから沼田ICまで関越自動車道を利用しようと考えていた。しかし、コーヒーを飲みながらしばらく待っても止む気配はない。そもそも雨が止んでも直ちに路面は乾かないだろう。こうなったら、待ち合わせ場所まで最短ルートでさっさと進み、ゆっくり昼食にすることとした。
 R145、R120を西に走って、12時には道の駅「白沢」に到着。沼田市に入ると雨は止んでいた。温泉施設と併設されたレストランで食事をしていると、ヨージが登場。
 彼は今回レンタルバイクでの参加だ。アメリカンもいいが、ワインディングを攻める楽しみも味わってみたいと、軽量コンパクトなCBR250Rをチョイスした。気に入ればセカンドバイクに…なんて構想もある。実はNinja250Rもレンタルしたことがあるのだ。「(ヨージ)今回はオユタさんが参加しないのが残念っス。こいつ(CBR250R)でバンディット250をぶっちぎってやりたかったっス。」
 そのヨージは7時30分に東京都江戸川区の自宅を出発し、近所で朝飯を済ませた後、清新町ICから首都高に乗り、関越自動車道の渋川伊香保ICで降りると、県道4号線で赤城山を攻め、赤城神社を観光してから北上して道の駅に至った。雨は降ったり止んだりだったが、降っても小雨だった。
 残りのメンバーはさいたま市のカッキーなのだが、この日の朝、彼は焦っていた。前日にバッテリーがあがっていることに気付き、充電を行っていたにも関わらず、出発時にエンジンが掛からなかった。どうやら完全に逝ってしまったようだ。しかし、バッテリーを売っているショップが開店する時間まではどうすることもできない。10時に速攻でバッテリーを購入し、交換後、関越自動車道を北上。これなら14時までには余裕で間に合うであろう。ところが、沼田ICで降りなければならないのに、スケジュールが狂って気が動転していたのか、カーナビにはみなかみ町にある本日の宿「ペンション 朝ねぼう」を目的地として、道の駅「白沢」を経由地に入れるのを忘れていたのだ。(宿への最寄りのICは沼田ICよりも北の水上ICである。) よって、沼田ICはそのままスルー。おかしいと気付き、一体何がどうなっているのかパニックになっていたら、水上ICも通り過ぎてしまった!結局、新潟県に入った湯沢ICでUターンして爆走した結果、何とか14時ギリギリに集合場所に到着したのであった。雨の状況はヨージと同様だった。
 「(カッキー)いや〜、なんとか間に合いました!新潟ツーリングもしちゃいましたよ。」「(ウメ)カッキーが参加するツーリングでは、必ず雨が降るな…。」「(カッキー)えっ!?」「(ヒロ)佐渡でも4日間全て降ったね。これで明日も雨が降ったら…雨男確定ってか。」「(カッキー)えっ!?えっ!?」「(ヨージ)お、カッキーまた何か迷惑掛けてるんスか?自分が締めておきますんで、まかせてくださいっス。」「(カッキー)なんでそうなるの〜!?」

集合2
 昼食抜きのカッキーに軽食をとってもらい、今後のルートを再検討する。
 ここから先はR120→R401→県道63号線(奥利根ゆけむり街道)というルートで、みなかみ町の宿まで走る予定だった(約78km)。特に県道63号線は延々と続くワインディングなので、楽しみにしていた。問題は雨と路面の状況だ。場合によっては関越自動車道を使った最短ルート(沼田IC→水上IC→R291→県道63号線:約30km)で宿に直行することもあり得る。
 ウメとヒロが道の駅に到着してから2時間。この間、今にもポツポツきそうな曇り空ではあるものの、雨は降っておらず、これならこの先の路面もドライなのでは…という期待が生まれた。というわけで、ワインディングルートに決定。14時15分に(念の為カッパを着て)道の駅を出発した。隊列はウメ、ヒロ、ヨージ、カッキーの順(部分的に変動あり)。
 R120はすぐにヘアピンカーブの連続するワインディング区間になったのだが、交通量が多い上にイエローラインなので、流れに乗って淡々と進む。ここはまだ我慢の走りだ。
 R401に入ると前がクリアになり、ペースが上がる。そしていよいよ県道63号線の坤六峠(こんろくとうげ)へ!
 ところが…、雨は降っていないものの、湿気を帯びた空気の中、みるみる路面はウェットに変わっていった。せっかく面白そうなワインディングで、交通量もほとんどないのに、これではペースを落として慎重に走るしかない。おまけに峠を越えた後は工事区間の連続で、何度も工事用信号で足止めを喰らった。
 藤原スキー場の辺りまで下って路面がようやく完全なドライになり、ヒロをパスしたヨージがウメに食らい付いていく。「(ヨージ)バイクは軽さが命っス。赤城山で鍛えた必殺のコーナリングテクニックを見せてやるっス!」「(ウメ)ほう。だが慣らし運転とはいえ、まだ回せるのだよ。バイエリッシェ・モトーレン・ヴェルケ・アーゲー。デュオレバーが生み出すジャーマン魂をとくと味わうがいい!」とウメがペースアップしようとしたら、最後の休憩ポイントである藤原ダムに着いてしまった。休憩といってもここから宿まではすぐ近く。しかし、どこにも寄らずに行くのも芸がないではないか。

藤原ダム1
 利根川上流部に建設された藤原ダムは、竣工年1959年、堤高94.5mの重力式コンクリートダムである。ダムを下側から間近に見ることができる、封鎖された作業用トンネルの前にバイクを停め、しばし付近を散策した。

藤原ダム2
 16時10分、「ペンション 朝ねぼう」着。
 本日の走行距離:237km(ウメ)/253km(ヒロ)/287km(ヨージ)/292km(カッキー)

夜の宴会「まだまだほろ酔いっス!」
宿データ 宿名 ペンション 朝ねぼう
場所 群馬県利根郡みなかみ町綱子294-1
感想 「ボリューム満点の欧風料理と、開放感いっぱいの天然温泉・貸切露天風呂で水上の大自然に広がる絶景の景色を満喫!」という謳い文句の通り、パイの包み焼きと鶏肉料理等はとてもおいしく、露天風呂も堪能した。ただし、食事中は足元に注意が必要だ。飼い犬が虎視眈々とスリッパを狙っているぞ!
1泊2食付き:9,750円(税込み)

露天風呂にて
7月22日(日) 天気:曇り(局地的に雨)
 朝起きたら、夕べの宴会がお開きになった時よりも、なぜか缶ビールが何本か増えている。実はヨージが飲み足りずに、他の3人が酔いつぶれた後も、夜中まで1人飲んでいたのである…。
 「(ヨージ)寝る時、外は雨が降っていたっス。」どうやら雨は明け方まで降っていたようで、8時の時点で宿の前の道路はようやく乾き始めていた。昨日走って来た山の方角は、曇ってはいるものの、雨の気配はない。どうせ今日は帰るだけ。協議の結果、もう少し待ってから沼田市まで昨日と逆コースを再チャレンジすることになった。そして、途中「吹割の滝(ふきわれのたき)」に寄ってから、沼田ICで高速に乗って帰ろう。
 9時10分出発。今日も寒い位の気温だ。
 しばらくは快適に走ることができたが、峠に入ると一気にウェットに…。昨日と同様で湿気を帯びた空気である。例えこのまま雨が降らなくても、昼過ぎまで乾かないのではなかろうか。「(カッキー)残念…。だけど、どうやら雨男の汚名は返上できそうだな〜。」
 ところが、県道260号線(鳩待峠)との分岐点を過ぎた辺りで一気に空が暗くなったかと思うと、ザーザーと雨が降り始めたのである!先頭のウメはカッパ着用を決め、しかし下り坂の狭い道なので、なかなか安全に停める場所が見付からない。そうこうしているうちに空が明るくなり、パッと雨は止んだ。太陽まで顔を出したのである。
 10時25分、吹割の滝近くにあるR120沿いのドライブイン着。「(ウメ)カッキー!なんださっきの雨はぁ〜!」「(カッキー)ふ、降りましたね。見事に!自分でも出来過ぎだと思いますよ。ハハハ…。」「(ヨージ)おかげでガードレールに突っ込むところだったんやでぇ〜!」 「(カッキー)え?あれは後ろで見ていたけど、雨が降る前にオーバーランしてたじゃん。…って、なんでまた関西弁?」「(ヒロ)おお〜、川が割れている〜!奇跡だ。ハレルヤ!」
 およそ900万年前の火山の噴火によって発生した火砕流が冷えて固まり(溶結凝灰岩)、片品川の流れによって侵食されてできたのが吹割の滝だ。V字型に切れ込んだ、落差最大7メートルにも達する滝は、なかなかの迫力!なるほど「東洋のナイアガラ」と呼ばれるだけのことはある。

吹割の滝1
 滝のすぐ近くまで近寄ることができるのだが、このエリアが国指定天然記念物で工事を行うことができない為なのか、安全柵がない。これ以上外に出ちゃダメよ、というラインに、文字通り石灰で白線が引いてあり、気持ちばかりのロープが張ってあるのみ。実際転落事故も発生しているらしく、スリル満点だ。

吹割の滝2
 一応観光もしたし、後は高速道路で帰るのみ。沼田ICから関越自動車道に乗って南下。12時頃に赤城高原SAで昼食とした後、藤岡ジャンクションで長野組と関東組は、お互いの安全とますますのご発展、ご健勝を祈念して別れた。

赤城高原SA「お疲れ!」
 慣らし運転中なので、全開加速はできないウメではあったが、それでも追い越し時にはヒロのニンジャ(国内仕様)が付いていけない!これは慣らし終了時が楽しみだ。
 ところで、カッキー雨男説は払拭する日が来るのであろうか?
 本日の走行距離:299km(ウメ)/307km(ヒロ)/243km(ヨージ)/210km(カッキー)

レポート by ウメ


グレートツーリング外伝 '12 in 神奈川
メンバー(マシン) ウメ(K1300S)、オユタ(バンディット250)、ヒロ(GPZ900R)、ヨージ(バリオスU)、カッキー(Z1000)
10月13日(土) 天気:晴れ
 8時、長野自動車道みどり湖PAにウメ、オユタ、ヒロは集合していた。気温は10℃以下で寒い…。この時期は日中との気温差が大きく、服装に気を使う。
 オユタのバンディット250にはインターネットで購入した汎用ビキニカウルが新たに装着されていた。「(オユタ)これのおかげで高速道路の走行がだいぶ楽になったぜぃ。」何と言っても、150km/h付近でタンクバッグ(マグネット式)が風圧によって吹き飛ばされ、胸の辺りに貼り付いてしまうという現象がなくなったのである。
 8時10分出発。岡谷JCTで中央自動車道に入り、東に進む。案の定、気温はみるみる上昇し、甲府の辺りで20℃位になった。
 釈迦堂PAでトイレ休憩した後、大月JCTから河口湖方面に向かい、9時30分に谷村PA着。ここでさいたま市から参加のカッキーと10時に合流予定だったが、既に彼は来ていた。
 これまでカッキーが参加したGTECのツーリング合計6日間で、“雨に降られなかった”日はなかった。雨男のレッテルを貼られていたわけだが、さすがに今日は降りそうもない。「(カッキー)これで私の雨男説は文字通り晴れましたね。」「(ヒロ)そうだな〜、明日も降らなかったら完全に認めようじゃないか。」明日の天気予報は曇りだが、雨の心配はなさそうだ。「(カッキー)まあ大丈夫でしょう。」
 9時45分に4人は谷村PAを出発。お次は御殿場で東京から東名高速道路を走って来るヨージと11時に集合となっている。
 東富士五湖道路を終点の須走ICまで走り、R138で御殿場へ。東名高速道路御殿場IC近くのゲームセンターに着いたのが10時30分。10分位したらヨージがやって来たので、なかなか順調に進んでいる。

集合!
 そのヨージはカワサキの250ccネイキッドスポーツモデルであるバリオスUのレンタルバイクに乗って来た。自分に合ったバイクを模索中の彼は、「グレートツーリング外伝 '12 in 群馬」ではCBR250R(単気筒)、GTECのツーリング以外にもニンジャ250(2気筒)をレンタルして乗ったことがあり、今回は4気筒というわけだ。
 「(オユタ)ヨージよ、この先はいよいよ走りのステージだ。今回はお互い250cc。勝負だな!」「(ヨージ)この時を待ってたっス。赤城山で鍛えた必殺のコーナリングテクニックを見せてやるっス!」
 11時、ゲームセンターを出発してR138を南下。隊列はウメ、カッキー、オユタ、ヨージ、ヒロの順。程なく県道41号線に右折。いきなりヘアピンカーブの連続するワインディングとなった。しかし、センターライン付近には継ぎ目があり、その周辺のアスファルトが剥がれて荒れている為、ライン取りには気を使う。やがて箱根スカイラインに入ると、さすがは有料道路だけあって快適な路面となった。各自、自分のペースで気持ちよく攻める。しかし、ふとオユタがバックミラーで後ろを確認すると、ヨージの姿は影も形もなかった…。
 芦ノ湖を見下ろす展望台の駐車場入り口で、先頭のウメは後続を待った。3番手のオユタまでは大差がなかったが、ヨージが来るまではだいぶ時間が掛かった。ヨージの後ろで殿(しんがり)を務めたヒロ曰く「のんびり走れてよかったよ。」「(オユタ)なんだヨージ、まったく相手にもならないじゃないか。」「(ヨージ)ありゃ、うっかりしてたっス。考えてみれば、これは当然の結果っス。」「(オユタ)え?何を言い出すんだ?」「(ヨージ)だってホーネットじゃないっスから。」
 実は今回のツーリングに向けて、ヨージはレンタルバイク屋でホーネット250を予約していた。しかし、直前になって予約日が後ろに1日ずれていることに気付き、慌てて連絡したものの、2日間空いていたのはバリオスUだけだったのだ…。
 「(オユタ)いや、どっちも4ストマルチじゃん。どの道似たような結果になったんじゃないの?」「(ヨージ)何言ってるんっスか。ホーネットは滅茶苦茶後ろのタイヤが太いっスよ。コーナリング性能がダンチっス。だから今回は引き分けってことにしてあげるっス。」「(オユタ)何だとぉ〜!?相変わらず減らず口ばかりたたきおって!タコ殴りにしてくれるわ!」「(ウメ、ヒロ、カッキー)まあまあ…。」
 要は排気量が少ない高回転型エンジンの扱いに慣れておらず、苦戦したのである。もしもヨージが前回のツーリングでレンタルしたCBR250Rに乗って来たなら、そこそこいい勝負ができたかもしれない。あのバイクは単気筒で高回転型エンジンではないが、その分低速トルクが太く、コーナリング性能も高い。ワインディングが得意なバイクなのだ。

芦ノ湖をバックに
 引き続き芦ノ湖スカイラインに入って少し走った所のドライブインで昼食。多少雲はあるものの、富士山や駿河湾といった遠くまでも見渡すことができ、気温も適度で絶好のツーリグ日和である。
 12時20分にドライブイン出発。箱根峠を越えると県道20号線(熱海箱根峠線)を南下して熱海市へ。海岸線に出てからは熱海ビーチライン、真鶴道路で本日の宿泊地、鎌倉市を目指す。ここまで4つの有料道路を走って来たのだが、いずれもETCは利用できない為、それぞれの料金(150〜250円)をその都度支払わなければならず、バイクでは面倒な作業だった。ただし、これまでのところ渋滞もなく、予定よりも早いペースで進んでいる。
 小田原市で西湘バイパス(ETC利用可)に入り、西湘PAで休憩後、西湘二宮ICで西湘バイパスを出ると、R134を東に進む。ところが、さすがは湘南海岸…。いきなり渋滞している。特に江ノ島付近は混雑していた。ひたすらすり抜けで走り、七里ヶ浜のコンビニで休憩。暖かいを通り越して暑い。江ノ島を眺めながらアイス菓子を食した。
 自転車やスクーターがサイドにサーフボードを装着して走っているのを目にすると、いかにも“湘南”といった雰囲気だ。特に大学の頃、よく湘南海岸へ遊びに来ていたウメは懐かしく感じていた。「(ウメ)青春だったな〜…。」
 まだ15時と余裕だったので、「鎌倉の大仏」で有名な高徳院へ行くことにした。しかし、江ノ島電鉄の長谷駅付近で、高徳院まであと数百メートルだというのに、駐車場待ちのクルマによって交通の流れはピタリと動かなくなった。長谷駅から高徳院までの歩道は観光客でごった返している。確かに、鎌倉を観光で訪れたら、大仏は外せないであろう。駅から近ければなおさらだ。道幅が狭く、すり抜けは無理…。ただでさえ暑い中、エンジンからの熱風にも耐えつつ、ようやく高徳院近くの有料駐車場に入ることが出来た。
 鎌倉時代から続くとされる高徳院の本尊が、「鎌倉の大仏」こと国宝の阿弥陀如来像だ。屋外に座しておられるので、境内のどこからでもよく見える。台座を含めた高さは約13メートルあり、なかなかの迫力。しかし、奈良の大仏に比べると、どうも威厳が感じられない。やはりそれは大仏殿がない為、近年に造られた日本各地にあるコンクリート製の巨大仏像とイメージがダブってしまうからであろう。この青銅でできた大仏、昔(諸説あるが15世紀頃まで)は大仏殿のなかに安置されていたのである。大仏の中にも20円払えば入ることができ、その内部構造も見学した。

高徳院
 16時30分、高徳院のすぐ近くにある本日の宿「鎌倉はせユースホステル」着。
 本日の走行距離:長野自動車道安曇野ICから300km/長野自動車道塩尻北ICから284km/222km(ヨージ)/276km(カッキー)
宿データ 宿名 鎌倉はせユースホステル
場所 神奈川県鎌倉市坂ノ下5-11
感想 江ノ島電鉄長谷駅の近くにあるアットホームなユースホステル。風呂場の脱衣室がちょっとカビっぽいのを除けば、設備に申し分なし。食事もおいしいし、豆から挽くこだわりのコーヒーもふるまわれる。これで1泊2食付き5千円(ユースホステル会員は4千円!)はリーズナブルだ。海にも近いので、鎌倉観光にはもってこい。ただし、駐車場が異様に傾斜しており、しかも道路と段差がある。大型バイクでの1人旅は要注意だ。駐車場から出るのは誰かにサポートしてもらわないと厳しいであろう。また、ドレスアップしたクルマもエアロパーツがバリバリ伝説必須である。

問題の駐車場
10月14日(日) 天気:曇り一時雨
 朝、神奈川県の天気予報を確認したところ、今日1日曇りで、降水確率は低い。昨日の暑さを思えば、むしろちょうどいいと言えよう。
 8時30分、東に向かって出発。ひたすらR134を海沿いに進む。交通量はそこそこ多く、車の流れに従って淡々と走る。すると、R134の三浦半島における最南端を通過した頃、ポツリ、ポツリと雨粒が…。「(カッキー)やば〜!また何言われるか…。」ポツリで終わって欲しいという彼の願いもむなしく、徐々に降り注ぐ水滴は多くなり、カッパが必要なレベルに達したところで、なんとか本日のメインイベントである三笠公園に到着。急いで駐輪して雨宿り…。
 雨は本格的な降りになり、止む気配がない。「(ウメ)みごとだ。雨雲を呼び寄せるとは。」だがそれは、カッキーだけに向けられた言葉ではなかった。ウメとカッキーは、GTECと別なツーリングにも行っているが、いずれもこの上なくいい天気だった。そして前回のGTECのツーリングにオユタは参加していなかった。つまり、これまでの情報を総合的に分析すると、「ヒロとカッキーの組み合わせは雨雲を呼ぶ。」ということになるのではなかろうか。「(ヒロ)え?オレ?なるほど…。すごいや!」
 三笠公園では記念艦「三笠(みかさ)」を見学するのが目的だ。その戦艦三笠は、旧日本海軍の敷島型戦艦の四番艦で、イギリスのヴィッカース社(バロー・イン・ファーネス造船所)にて建造された。進水は1900年(明治33年)。1903年(明治36年)に連合艦隊旗艦となり、数々の作戦に参加。最も有名なのは、1905年(明治38年)のロシア海軍バルチック艦隊と交戦した日本海海戦であろう。1923年(大正12年)に海軍から除籍後、記念艦として保存されていたが、第二次世界大戦の敗戦後、解体処分されそうになったり、甲板上の構造物が撤去され、ダンスホールや水族館が造られたりした。それでも多くの人達の尽力により、現在の状態まで復原されたのである。三笠は船自体が資料館となっており、一般に公開されているのだ。
 全長は131.7m。以前乗ったことがある新日本海フェリーの「ゆうかり」は約200mなので、それに比べるとだいぶ小さな船ではある。しかし、実際に甲板を歩いてみると、なかなかどうして、いかにも戦闘艦といった重厚さを実感できる。艦橋で「敵前大回頭」(トーゴー・ターン)のポーズをしながらの記念撮影はお約束。中甲板の資料館はボリューム満点。
 残念ながら砲塔、煙突、マスト等といった甲板上の構造物は(先ほど記載したように、実物は全て撤去されてしまった為)レプリカだ。よって、旧日本海軍の戦艦の実物主砲を、完全な形の砲塔として見ることができるのは、海上自衛隊の幹部候補生学校、第1術科学校(広島県)にある戦艦陸奥の40センチ連装主砲塔だけなのだ。それは1935年(昭和10年)の近代化改装時に取り替えられた4番砲塔を教材として設置した本物で、「グレートツーリング '09 in 四国 & 九州 & 中国地方」において間近に見た。
 じっくり見学していたら、12時を過ぎてしまったが、雨はまだザーザーと降っている。スマホでアメダスをチェックすると、天気が回復傾向にあるのは間違いない。公園に面したレストランで食事をしている最中にようやく止んでくれた。

記念艦三笠(出発直前の雨上がりに撮影)
 13時、路面はまだ濡れているものの、もう雨は降らないと踏んで、カッパを着ずに三笠公園を出発。
 幸浦ICから首都高速湾岸線に乗り、横浜ベイブリッジを渡って首都高速神奈川1号横羽線で北上。浜崎橋JCTで首都高速都心環状線に入り、新宿経由で中央道へ。その間にヨージ、カッキーは離脱して、それぞれの帰路についた。
 時折パラパラとシールドに雨粒が当たるものの、大月を過ぎた辺りから太陽が顔を出した。もう雨の心配はなさそうだ。
 途中、ウメがレクサスLS460とバトルし、250km/hオーバーでぶっちぎったことはあったが、基本的には3台仲良く巡航し、諏訪SAで最後の休憩。16時50分に出発=解散となった。
 本日の走行距離:長野自動車道安曇野ICまで335km/長野自動車道塩尻北ICまで319km/119km(ヨージ)/153km(カッキー)

レポート by ウメ


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